映画

価値観の変更を迫る映画

■梅野正信「映画で見なおす同時代史」(静岡学術出版)はスゴイ。 たった142ページ、よくある映画紹介本と思いきや、そのコンセプトがスゴイ。「観た人の世界観・価値観が変わる」そんな映画を厳選して紹介している渾身の本なのだ。影響されて何本か観た…

不愉快でリアル「アイ、トーニャ」

『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』予告編(5月4日(金・祝)公開) ■ナンシー・ケリガン襲撃事件で有名な元フィギュアスケーター、トーニャ・ハーディングの半生を描いた映画「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」に、とても印象的な場面があ…

フォックスキャッチャー

大富豪がアマレス金メダリストを殺す実話の映画化「フォックスキャッチャー」は、作り手の悪意が見える後味の悪い傑作。ホモセクシャルな暗喩、本格的で偏執的なレスリング場面、繊細で鬱屈した狂気。フィルムで撮影したと思しき寒々とした映像は必見。https…

君が生きた証

銃乱射事件で息子を亡くした父親の映画「君が生きた証」は、喪失感から立ち直る話だと思っていたら違った。語り口や細部のユーモア、役者の存在感など、とても上手くて舌を巻いた。目の前の問題にきちんと向う、きっぱりとしたラストは心にしみた。https://t…

「パリよ、永遠に」

映画「パリよ、永遠に」は、1944年、退却時にパリ破壊を命じられたドイツ軍将軍と、中止を説得するスウェーデン総領事との、シブくて息づまる攻防。限られた予算で拙速に舞台劇を映画に置き換えたせいか、説明的なセリフがNHK大河ドラマのよう。https…

「きかんしゃトーマス・勇者とソドー島の怪物」

映画「きかんしゃトーマス/勇者とソドー島の怪物」存在しない怪物の影に怯えるパーシーが、友人に励まされ、勇気と友情を獲得し実感していく。皆が弱く葛藤する存在で、だからこそ愛しいということを、愚直にまっすぐ語る、王道を行く秀作。泣けます。https…

おみおくりの作法

孤独な死者の葬儀を行う公務員の日常を淡々と描く映画「おみおくりの作法」は、小津の作品や黒沢の「生きる」を彷彿とさせる佳作。死者の信仰が多様で尊重されているので、日本人にもわかる映画となっているのがミソ。ラストは感動的だが、直截的かも。https…

「幕が上がる」

「幕が上がる」はアイドル映画だが、時間をかけて作ってあり、演技や絵作りがきちんとして、ちゃんとした見ごたえのある映画になっている。長回しに耐えるアイドル(笑)。高校演劇と関わったことのある方々には、劇場でご覧になることを勧めます。https://t…

「WOOD JOB! 神去なあなあ日常」

林業体験を通して若者が成長する映画「WOOD JOB! 神去なあなあ日常」は「大傑作」。林業の理解促進になるだけでなく、さすが矢口史靖、映画としても見ごたえあり。ラスト近く、奇祭のホラ話的高揚感は、日本映画としては空前絶後ではないか。https:/…

アニー

主人公を黒人に、舞台を1930年代から現代へとおきかえたリメイク版。オイラの頭には、1982年のジョン・ヒューストン版が頭にあるので違和感が先に立つ。アニーと心を通わせる大富豪(ジェイミー・フォックス)が、下品で口から食べ物をふいたり、グ…

「Flames of War: Fighting Has Just Begun」

見つけるのに時間がかかってしまった。イスラム国の広報目的のプロパガンダ映画「Flames of War: Fighting Has Just Begun」を見る。こちらのブログの記事が秀逸で、ぜひ観たいと思っていたのだった。映像は下のリンク先に。 https://pietervanostaeyen.word…

「フューリー」と「街場の戦争論」

(ラストに言及しています) 第2次大戦末期の米シャーマン戦車と搭乗員の奮闘を描くB・ピット主演「フューリー」について書く。死の恐怖や不条理さをグロテスクに描いた優れた反戦映画だと思う。ただ不可解だったのは、終盤、圧倒的多数の独軍を前にして、…

ソウォン/願い

(ネタバレ炸裂です) これは劇場で観たかったなあ。BOSE氏の2014年映画ランキングベストワン。実話である。2008年に韓国で起きた幼女性暴行事件。事件によって傷つき、苦しみ、葛藤し、癒され、そして再び歩み始める家族の物語。いわゆる「癒し…

2014年キネマ旬報ベストテン

毎年恒例、キネマ旬報ベストテンの2014年度分が発表された。私事だが、ここ数年、映画館通いをサボり気味。だが観ていない分は,時間がかかっても観たい。でも、オイラの住む徳島の映画館にかかった作品は、ベスト10のうち何本あるだろうか? そういえ…

オオノ氏の2014年ベスト20

演劇ユニット「Will-o'-the-Wisp」の主宰者オオノ氏の恒例2014年演劇&映画ベスト20。オイラがもっとも信用をおいている芝居と映画の目利きとして、いつも参考にさせてもらっている。社会人としての責任を果たしながら、昨年は演劇122本、映画は2…

「ある精肉店のはなし」

大阪貝塚市にある「北出精肉店」をめぐるドキュメンタリーである。北出精肉店は、単に肉を仕入れ小売するだけの店ではない。小牛から自分で育てた牛を、小規模な市立の屠場で、自らの手で屠畜して、放血し、皮をむき、腹を割り、内臓処理を行う。 冒頭は、牛…

2013年キネマ旬報ベストテン

毎年恒例、キネマ旬報ベストテンの2013年度分が発表された。はからずも「老い」をテーマにした作品が、日本映画・外国映画ともにベストワンに選ばれた。作品の出来のよさに加えて、日本社会の高齢化や、投票者の高齢化などが選出結果に微妙に影響を与え…

無能の人

久しぶりの更新。 つげ義春の同名漫画を、原作に惚れこんだ竹中直人がメガホンを取った1991年の映画化作品。マルセ太郎(1933−2001)に関心があって、その姿を確認したかったので本作品を見たのだが、その他にもいろいろ印象に残ったのでレビュ…

「そして父になる」

(ネタバレあります) 『誰も知らない』の是枝裕和監督の最新作とあれば、何をおいても映画館に行かなければ、そんな思いで観た。病院で息子を取り違えられた夫婦が、子どもを相手の親に戻し、実の子どもを引き取って育てようとする中、親としての責任や自覚…

「パリ20区、僕たちのクラス」

パリ20区、僕たちのクラス [DVD]出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2011/04/28メディア: DVD クリック: 13回この商品を含むブログ (34件) を見る (ラストに触れています) 長らく観たかった作品。パリ20区の中学校を舞台に、フランス語教師フランソワ…

「風立ちぬ」ラストについて

(ラストに触れています) (9月2日よりのつづき)「風立ちぬ」は、宮崎駿の「辞世の句」である。老境に達した彼なりの「落としまえ」である。最後のカット、夢の草原で、カプローニが二郎に言う。「寄っていかないか。いいワインがあるんだ」。そして、二…

「風立ちぬ」その2

(9月1日からのつづき)「風立ちぬ」の内容は、以下のようなものである。「夢の代償は大きい。理想の飛行機を作ることが、大量殺戮に手を貸す結果となった。人間は矛盾した存在である。(宮崎駿自身も「反戦」「護憲」を語るが「軍事オタク」でもある)そ…

風立ちぬ

合点がいった。「風立ちぬ」をはじめ、最近の宮崎駿の作品に強く漂う「死のイメージ」についてである。9月1日夜に報道された宮崎駿の長編アニメ映画製作からの引退宣言を聞きながら、宮崎駿は、作品をつくることで、死に方を模索していたのだということを…

パシフィック・リム

日本の特撮・アニメに造詣の深い監督ギレルモ・デル・トロ(「ヘルボーイ」「パンズ・ラビリンス」)が、レイ・ハリーハウゼンと本多猪四郎に献辞を捧げたSF怪獣映画。近未来、太平洋の海底の裂け目から次々と送りこまれてくる「カイジュウ」に立ち向かう…

風立ちぬ

見た。恐ろしいラストカット。「全身小説家」のラストの逆ヴァージョンだ。宮崎駿はぜったい意識的にやってると思う。詳しいレビュウは後日。

東村高江を描いたドキュメンタリー「標的の村」が映画になった!

ヘリパッド基地建設に反対する東村・高江の住民のたたかいを描いた琉球朝日放送製作のドキュメンタリー「標的の村」が、再編集され映画として8月10日より公開される。「標的の村」については、2012年9月12日の本ブログでも触れたが、これは、テレ…

探偵はBARにいる2/ススキノ大交差点

(内容に一部深く触れています) しばらく更新を怠っていた。学年主任として北海道への修学旅行の企画・実施に追われていて、ブログどころではなかったからだ。おかげで5月におこなわれた高知の演劇祭の感想も滞ってしまった。高知の皆様、すみません。こち…

「てなもんや三度笠」

てなもんや三度笠 [DVD]出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)発売日: 2013/06/01メディア: DVDこの商品を含むブログ (1件) を見る 古い人なら誰もが知っているテレビコメディ「てなもんや三度笠」は、1962年(昭和37年)から1968年(昭和4…

シュガー・ラッシュ

アメリカ映画のヒーロー志向を少々ひねったディズニー製作のアニメ映画。アーケードゲーム「フィックス・イット・フェリックス」の中で悪役のラルフは、いつも悪役をやらされていることに不満を持ち、「ヒーローのメダル」を求めて、他のゲームに入り込む。…

レビュウ「桐島、部活やめるってよ」UPしました。

「その3」を2013年3月22日付にUPしました。「その3」は、ネタバレありです。 http://d.hatena.ne.jp/furuta01/20130322 「桐島、部活やめるってよ」その1http://d.hatena.ne.jp/furuta01/20130324 「桐島、部活やめるってよ」その2http://d.hat…