「朽ちていった命−被曝治療83日間の記録−」NHK「東海村臨海事故」取材班
- 作者: NHK「東海村臨界事故」取材班
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/09/28
- メディア: 文庫
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読むのがつらくなる。恐ろしい。1999年9月30日。茨城県東海村の核燃料加工施設「JCO東海事業所」で、ウラン燃料の加工作業中に、大内久氏は被曝した。推定被曝量は20シーベルト前後。死亡率100%。一般の人が一年間に浴びる限度とされる放射線量のおよそ二万倍という。
それでも大内さんは、皮膚が焼けただれていたわけでもなく、水ぶくれすらなかったという。意識もしっかりしていて、受け答えもしっかりしていた。入院初期は「明るい大内さん」と言われ、周囲にもよく気を遣っていた。大内氏の骨髄細胞の染色体は、バラバラに破壊されていたという。それは、今後新しい細胞が作られないということを意味する。リンパ球や血小板がなくなり、抵抗力が落ち、輸血が必要となる。皮膚がはがれ落ち、激痛が大内を襲う・・・。
壮絶な83日間の記録。大内氏の死にいたるプロセスを、忠実に、情緒に流れることなく追っている。被曝の恐ろしさと非人間性が、ひしひしと伝わってくる。大内氏の死を風化させてはならない。オイラはつくづくそう思う。