週刊東洋経済2012年12月15日号「ミスターWHOの少数意見「中国駐在員たちの本音 日本から爆弾が降ってくる」」



 物事は多面的に見る。
 週刊東洋経済の短い記事は、そのことを改めて思いおこしてくれる。
 オイラはちゃんと見えているだろうか。

 9月の反日暴動後、マスコミは頻繁に尖閣問題を取り上げてきたが、日本企業の中国駐在員たちの声は伝わっていない。今回は彼らの本音をお伝えしよう。


 「日本では中国側が悪いという報道しかない。現地にいると、石原前都知事野田首相など、次々に爆弾を投下しているように見える。駐在員がどんなに努力しても、これだけ爆弾を落とされたら、問題はこじれる。現地の商売を彼らが邪魔している」
 これが代表的な声だ。


 「中国政府は日本の対応が読めなくて困っている」そう話すのは、中国在住10年を超える日本人だ。「中国で評価が高かった安倍さんが次期政権を担えば事態は好転する、と読んでいた中国人も多かった。ところが、その安倍さんは総裁に就任すると靖国神社に訪問した。日本は何をしてくるかわからない、怖い、と中国人は思っている。


 もっとも、筆者とて一方的に駐在員の肩をもつつもりはない、駐在員は「日本車は破壊されるから買い手がなくなり、売上の落ち込みがきつい」と言う。だが、日本車の売り上げが減少した原因は反日だけだろうか。


 筆者はリーマンショック後の2009年、中国在住の日本車メーカー幹部からこんな言葉を聞いた。「実は売り上げは好調だ。けれど、世界的な不況の中、中国だけが好調となれば、本社が売り上げ目標を上乗せしてくることは必至。だから黙っている」


 今回はその逆ではないのか。反日運動が起こる前から日本車の売れ行きは決してよくなかった。「反日にかこつけて、自分たちのこれまでの怠慢や施策の誤りを隠蔽しようとしている」という厳しい見方があるのも事実だ。


 実際、日系に納入していた自動車部品メーカーの中では、反日以前から供給先を日系以外に広げようという動きが出ていた。米系やドイツ系に食い込んだ部品メーカーはその後、順調に売り上げを伸ばしているという。


 しかし、上海の金融関係者は駐在員に同情的だ。「日本企業の中には、思った利益が上がらない企業、赤字を垂れ流している企業が結構ある。本社が勝手に中国進出を決めておいて、さあ儲けろ、と尻を叩かれるのだから、駐在員はたまったものではない」


 最近は、尻をたたくだけではなく、日本国内の余剰人員を中国に派遣してくるケースも増えている。送り込まれるのは、コストのバカ高い中高年か、何の仕事もできない20代。せっかく、駐在員が稼いだ収益が彼らの人件費で吹き飛んでしまうのだ。


 この金融関係者は「日本は国内不況をそのまま上海に持ち込んでいる」と言う。中国には「上に政策あれば、下に対策あり」という言葉がある。爆弾が次々降ってくる中、駐在員が「対策」を練るのは当然かもしれぬ。(東えびす)