今年初めて海で泳ぐ



 やっと海シーズン到来。今年初めて海で泳ぐ。いつもの年なら5月には初泳ぎ(!)なのだが、今年は寒い日が多く、今まで海に入るという感じにはならなかった。いつもよく行く吉野川河口付近の小松海岸に行ってみると、海開きはまだで、サーファーがほとんど。風が強いのに加えて、ウインドサーフィンをやっている人たちが、かなり強引なパフォーマンスを見せていて、場所を移動する。


 オイラの住んでいる徳島周辺は、いろいろな風貌を持つ海に囲まれている。同じ四国の海でも、これほどまでに違うのかと思うほど多彩だ。紀伊水道に面している海岸は、波も大きく風が強い。快適に泳ぐには、波風の強い時間帯を避けなければならないが、その分水はきれいでクラゲなども少ない。県南に行くと、サンゴや死滅回遊魚に出会う確率も多くなる。一方、瀬戸内海に面する海に行けば、穏やかでかで波も少ない。なんと台風が通過した直後でも泳げる場所もある。反面富栄養の場所も多く、泳ぎの妨げになる水生動物(クラゲなど)に出くわすことも多い。


 今日は風が強く、時間も限られていたので、淡路島南端の伊毘海水浴場に行く。ここはいつも京阪神からの人でごった返しているのだが、今日にかぎっては休日にもかかわらず、海岸には人はまったくいなかった。水は少々冷たい代わり、いつもはたくさんいるクラゲや有櫛動物はほとんど見られず、快適に泳ぐことができた。潜ってみると、いつものように、キュウセン、メバル・グレの稚魚、ウミタナゴ、ヘダイ、ボラなどが確認できた。


 オイラにとっては、しばらくは毎日水泳三昧、天国の日々が続く。だが、最近の若者の「海離れ」が著しいらしい。そういえば、どこの海水浴場でも、波打ち際で遊んでいる子どもはともかく、泳ぎに来ている大人はほとんどいない。日本生産性本部が出した「レジャー白書」によると、昭和62、63年の海水浴参加人口は、年平均約3200万人を超えていたが、平成22年は1480万人と半減。「日焼けが嫌」「匂いが嫌い」「ベトベトする」「謎の生き物が大嫌い」等など、否定的コメントが並ぶ。臨海学校へ行く学校は少なくなり「ゆとり教育」の中で授業時間数が限られ、水泳の授業も減った。無理に泳がせるという風潮もなくなり、泳げない若者も増えている。「プールの方がいい」という人も多い。


 そういう時代だからこそ、海との「いい出会い」が必要だ。実はオイラも年少期は泳げなかった。いや、正確には「泳げた」のだが、川で泳ぎを覚えたオイラは、皆と同じようには泳げなかったのだ。そして集団行動を強制される水泳の授業が憂鬱だった。泳ぐようになったのは、実は15年くらい前から。県南の学校に勤務していて、下宿先から数キロの地点にある海岸で、ふと泳いでみたら、とても気持ちよかったのだ。それから病みつきになった。人生、何がきっかけになるかわからない。


 ボーっとして浮かんでいるだけで、世事のわずらわしさから解き放たれる。生物は海から生まれてきた。胎内にいるかのような平穏感を味わうことができる。ドーパミンが分泌される。健康にもいい。また、自然との対話は、人間の本能を活性化させる。危険を察知したり回避したりする能力は、海で培われる。今年はあと何回海に行くことができるだろうか。