週刊東洋経済2013年7月20日号/妹尾堅一郎「戦略思考の鍛え方/新ビジネス発想塾」


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 わずか2ページの連載記事だが、とても興味深い。なぜアップルやグーグルは強いのか。なぜ日本のエレクトロニクスは負けるのか。明快な説明で、オイラにとっては新発想、まさに目からウロコだった。氏の他の著作も読んでみようっと。


 記事は、こんな内容である。勝ち組の「製造業系」のビジネスモデルには、実は共通点があると言う。それを筆者は「ハンバーガー分離モデル」と呼ぶ。


 「ハンバーガー分離モデル」とは何だろう。筆者は次のような思考実験を具体的に挙げて説明する。仮に今までハンバーガーが発明されていなかったとする。それがこのたびハンバーガーが発明され、発明した企業は、新しい食文化普及のイノベーションを起こそうと考える。さて企業はどんなビジネスモデルをたてるだろう。この場合、大きく分けてふたつの方法が考えられる。ひとつは、ハンバーガー全体の出来で勝負する方法、もうひとつは、パテとパンズをあえて分けた商品形態で勝負する方法である。


 筆者は言う。「欧米の勝ち組は意図的に自社で発明したものすべてで勝負をせず、レイヤーに分離する」つまり、パテを自社領域にしたら、バンズをあえて他へ公開するというのだ。なぜか。バンズを標準化して、コモディティ化を促進し、他の企業に苛烈な競争をさせれば、市場の拡大は加速され、自社領域としたパテも自動的に売れるというのだ。


 逆に言うと、日本の多くの企業が新興国と競い合っている分野は、勝ち組企業が協調的なふりをして提供した技術やフォーマットによって形成されたレイヤーなのだ。「最近のビジネス誌を見ていると、悲しくなることがある。グローバルに活躍するべき大企業の経営者が「新興国とガチンコで勝負する」などと言っているのだ。それでは欧米の勝ち組の思うつぼではないのか。彼らは、日本や新興国がオープンな協調的競争領域で争えば争うほど、実は利を得られるように仕組んだビジネスモデルを形成しているのだ」


 なるほど。筆者は製造業について論じているが、オイラがかかわっている、教育や演劇など、知的コンテンツについても同じようなことが言えるかも知れない。単なる知的読みものとしてではなく、組織や成員の知的向上を目指そうと企画する場合の戦略の立て方としても参考になる。