善意で敷きつめられた倒錯

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大正大学で行われた「叱られ方講座」をNHKが紹介していて、論議を呼んでいる。オイラが思うのは、企業に都合のいい、必要以上に従順な人材を養成するという点においては、この「叱られ方講座」も、高校で日常的にやっている、挨拶、お辞儀、服装等の「指導」の延長線上にあるように見える。

 ■叱られ方より、労働法や人権、パワハラへの対処を教えろ、という至極もっともな意見がスルーされて、職場でのトラブルを被雇用者のふるまい方の問題に矮小化されるのも、高校での就職指導のように見える。「労働問題と人権」は、今でも高校では事実上タブーの領域である。

 ■「若者は、叱られ慣れてないのだから、叱られる側に居着かされて当然」という感じの、講師・大学・NHKの無神経さには、イライラさせられる。コメントを発する学生は、健気にも善意に解釈してマウントをかわす。コミュニケーション講座を標榜しつつ、どこか真剣に切り結んでない感じに見えて歯がゆい。

 ■学校教育そのものに、ボタンの掛け違えがあるようにオイラは思う。そもそも「若い人は叱られ慣れてない」という認識は、大学らしくない。どんなエビデンスに基づいて言っているのか。若いひとのなかには、叱られ慣れている人もいるのではないのか。ひとを荒っぽい分類にあてはめ印象で判断している。「部落の人は~」「朝鮮人は~」「О型は~」と同じ。こういう物言いや現状認識のことを偏見というのではないのか。その認識に無批判に乗っかるメディアが、さらに偏見の拡大に努めているように見える。