第27回高知高校演劇祭 その12


上演13 宿毛高 長谷川琥珀作「令嬢メイド・御堂河内アンナ」


 コントである。作品を悪く言っているのではない。コントとして作られコントとして解釈してほしいと作品が求めている。笑いを目的にして作られていて潔い。既成作品だが、作品の割り切りがはっきりしているのは、美点だと思う。


 ただ、「笑い」は難しい。健闘しているところもあるが、力の足りない部分もある。「男」の弱い腰のひけた感じは個性的で面白いと思う。絞り出すようなセリフは存在感あり。正面を切りすぎるのは玉にキズであるが、役者として印象に残った。


 田舎弁丸出しのメイドも内容的には面白いが、演技がフリになっているのが気になった。フリになるとは、気持ちが乗らずに段取りで所作をこなしているということである。これは田舎弁のメイドだけではないが、ドヒャー、とずっこける場面をはじめ、強盗に驚いたりびっくりしたりする肝心のリアクションの瞬間に、気持ちが乗ってない。笑わせるためには、ひとりで演じるのではなく、お互いの呼吸を合わせたりずらせたりして、観客の想像を上回る表現を現出させないといけない。

 令嬢アンナは、丁寧なセリフ回しはいいのだが、セリフを切りすぎて、セリフの途中に変な間ができた。おかげでテンポが悪くなった。手が同じ場所にあり固まっていることが多いのも気になる。


 ナイフは緊張感を醸し出す小道具である。だが、本作では、ナイフの取り扱いが少々雑なので緊張感を削いだ。作品全体に緊張感を与えるためにも、ナイフの取り扱いをきちんとした方がよい。本物のナイフを突きつけられたら、我々はもっとコワいと思うのだ。ギャグだからいいかげんでもよいのではない。怖いものをきちんとコワいと実感して演じた方が、作品全体がリアルになるし、全体にしまりが出てきたに違いない。


 舞台装置は簡便だが、さまざまな小道具を手作りして、出来はともかく統一感があったのはよかった。