RED
老人八面六臂。リタイヤしたCIAエージェントの活躍するアクション。ブルース・ウィルス、モーガン・フリーマン、ジョン・マルコビッチ、ヘレン・ミレン、リチャード・ドレイファイス。
役者にはそれぞれ見せ場があり、ビッグネームたちは喜々として演じているように見える。とくに、紅茶が似合いそうなヘレン・ミレンが、純白のドレスに身を包んでマシンガンをぶっ放つシーンは、映画的にとてもハマッていて美しい。言ってみれば、このシーンは「キック・アス」の「殺しまくる小学生」と好一対だ。子供と老人の女性の殺戮。倒錯の悦楽。
CIA職員役でチラッと出ていたアーネスト・ボーグナインには驚かされた。もちろん本物である。2011年3月現在94歳。とても見えないし、カクシャクとしている。ボーグナインといい「ウォール・ストリート」のイーライ・ウォラック(96歳)といい、つくづく役者はスゴイと思う。
内容について。ヌケヌケとした映画である。主人公側の老人たちは、やり手のエージェントとしてうまく立ち回る。事件に至る前に、コトの準備はほとんど終わっており、修羅場でも涼しい顔をして敵を出し抜いていく。観客は常に「何が起こったのか」と不意打ちで驚かされる連続。これが基調になって映画は展開する。マンガ的だが、これはこれでアリだと思う。
主人公側の人間は、あまり汗をかかない。クールであり飄々としている(汗をかくのは、振り回される若きCIA職員の役割だ)。いわゆるおとぎ話だ。だから主人公側の人間が死なないのも違和感がないし、観客もそのつもりで観ている。
しかーし、モーガン・フリーマンだけは、あっけなく死んでしまうのである。えっと思う。前半、モーガン・フリーマン危機一髪のシーンがあって、そこは飄々と敵を倒したではないか。2番目に名前が出ている役者が、こんなにあっけなく死んでしまうはずはない。現にヘレン・ミレンは撃たれても死ななかったし。きっと死んだとみせかけて、ラスト前か、ラストクレジットの終わったあとで、実は生きていた、きっとヒョイと顔を見せるに違いない、と観客は期待する。オイラも期待した。たが、そうはならない。
モーガン・フリーマンは、ガンを患っている、と言い訳がましく映画の中で言っていて、ブルース・ウィルスの身代わりに死ぬ理由はつけられているが、何しろおとぎ話なのである。モーガン・フリーマンだけ、あんなあっけなく死ぬなんてことはありえない、多くの人がそう思っただろう。いやいや、それは誤解です、現実はそんなことはない、皆死なないとは限らないのでした、なんて野暮なことを言えば、せっかくのおとぎ話が、リアルな世界に逆戻りである。
製作上の都合か、あるいは脚本の変更か、そのあたりの事情はわからない。おそらくは、作品の整合性よりも、モーガン・フリーマンが死んでしまう展開の意外性を取ったのだろう。見る側は、喉に小骨のひっかかったような感じを覚えるのである。
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「世界最速のインディアン」もジジイが頑張る映画。アンソニー・ホプキンス扮するニュージーランド人がオートバイ世界最高速記録に挑む。実話を元に脚色して映画化。どうも世界では、ジイさまが頑張っておられるようである。オイラも頑張らなきゃ。