がんばれ! ベアーズ


がんばれ!ベアーズ [DVD]

がんばれ!ベアーズ [DVD]


 ロサンゼルスの少年野球リーグを舞台に、ダメっ子たちが力を合わせて試合に勝ち、自信を取り戻していく姿を描く。チームのコーチは、元プロ野球選手でアル中のウォルター・マッソー。チームのメンバーにテイタム・オニールジャッキー・アール・ヘイリー。マイケル・リッチー監督。1976年。


 キャラ立ちしたチームのメンバーが魅力


 この映画はヒットしたし、今でも好きな人が多い。野球映画である、子どもにも見せられる、わかりやすい、テレビで何度も放映されたなど、親しみやすい理由は多々あるが、なんと言っても、登場人物の個性がわかりやすく描き分けられていて、いわゆる「キャラ立ち」していることが魅力。少年たちが登場人物なので、個性を単純化しても違和感が少ないし、黒人、ユダヤ系、メキシコ人、市会議員の息子、太っちょ、内気、ケンカ早い、女の子、不良というように、さまざまな立場の子どもたちを登場人物に配したことも、内容とよくマッチして効果的だと思う。キャラクター優先のテレビ、アニメ、マンガなど集団劇のお手本といった趣。


 展開はやや単調。これは助っ人加入でベアーズが勝利するという展開のせい。本来なら、メンバー同士の葛藤によって、主人公たちが成長するプロセスを描くべき。それがドラマの醍醐味。しかしメンバー同士の葛藤やドラマが少ない。子役中心なので、役者に十分演技をまかせられないはがゆさが残る。


 勝利よりも大切なもの


 また、終盤の決勝戦で、熱くなった監督たちが、勝つために熱くなり、手段を選ばなくなる下りも唐突で大人げなく見える。子どもの手前そんなバカな真似はできないというのが大人の分別というもの。勝ちにこだわって見境がなくなるという、子どもっぽい真似をするのなら、そこに至る必然性を描かないと、大人たちが本当の分別なしに見える。


 しかし、勝利よりも、チームがチームとして成立することの方が大切なのだ、チームワークの大切さが必要なのだ、そして各人が努力しつづけることが大切なのだと説く。その類いまれなるまっとうさには、素直に心打たれる。それが人種や信条の違いを越えて結束を高めてきたアメリカン・スピリットそのものだということを、ラストシーンの球場にはためく星条旗がはっきりと示している。