「週刊東洋経済」2012年6月2日号/The Compass「エリートたちの失敗−ポピュリズムがダメだと言えるのか」原田泰


週刊 東洋経済 2012年 6/2号 [雑誌]

週刊 東洋経済 2012年 6/2号 [雑誌]


 歴史に詳しい経済学者、原田泰氏のコラムが印象に残る。「ポピュリズム批判」批判である。「ポピュリズムは危険」という人が多い。だが歴史的に見て、「反ポピュリズム=エリート」は的確な判断ができたのか、大いに疑問があると彼は言う。


 原田氏は歴史から説く。「日本の軍人は社会本流のエリートだった。・・・・日本の軍人がナチスにあこがれたのは、彼らがユダヤ人から奪った邸宅に住み、統制経済によって私腹を肥やし、豪勢な生活をしていたからだ。・・・・日本の民衆は、もっと健全な感覚を持っていた。迫害から逃れたユダヤ人がシベリア鉄道を通って日本に着いたとき、多くの民衆は同情し、無力な人をこれほどむごく追放するドイツへの疑問を表明している。この感覚が支配的であれば日独同盟は成立しなかった」


 「日本の消費税率を上げなくてよいというのはポピュリズムだと批判する人が多いが、本当だろうか。税率を上げれば財政支出の拡大は止まらなくなるだろう。・・・・07年度から11年度までの4年間で一般会計歳出は、25・7兆円増えている。4年で25兆も増えるのなら、5%の税率で12兆円あまりの消費税を多少あげても追いつかない。高齢化がピークを迎えるとき、いったいいくらの予算が必要になるのか教えてほしい」


 「日本の軍部は、終わりを決めることなく、だらだらと戦争を続けた。最終的にどうしたらよいのか、どうしたら戦争を終わらせることができるのか、何も考えていなかった。ポピュリズムより始末が悪いエリート主義はいくらでもある」


 消費税増税論者は、最終的に日本経済と財政をどうするつもりなのか、考えているのだろうか。