もりまさえインタビュー



 3月7日、オイラの勤務校の演劇部OBがひとり芝居を上演した(オイラは演出として参加した)。作品は野田秀樹の「売り言葉」。初演は2002年に大竹しのぶによって演じられ、多彩で絢爛たる演技が評判を呼んだ。


 内容は高村光太郎高村智恵子のドラマ。光太郎の詩文集「智恵子抄」によって、この二人の夫婦の純愛の様子は有名である。何度も小説や映画やドラマに取り上げられ、そのほとんどが、互いを信頼する恋情あつき姿を、ロマンティックかつ美しく描いたものである。


 だが野田秀樹の「売り言葉」は違う。光太郎の女癖、愛の破綻、実家の破産など「智恵子抄」では描かれなかった影の部分にスポットを当て、追いつめられ狂っていく智恵子の姿を陰影濃く活写して見せた。


 今回ひとり芝居を演じたのは、オイラの勤務校の演劇部OBである「もりまさえ」。もりは、昨年2月、四国学院大学ノトススタジオで上演し好評を博した「ほどける双子」に次いで2作目のひとり芝居。ひとり芝居と言っても、今回は1時間30分ほどの作品。城北演劇部時代「またあしたっ」などで見せたイキの良さに加え、一回り成長した彫りの深い演技を示すことができたと思う。


 以下は、その時のパンフ(?)に書かれた主演女優のインタビュー記事。


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 モリちゃんってまぶしく見えませんか。私にはない部分を持っている。あの独特のキラキラ感。そんなモリちゃんの話をいろいろ聞きながら、もりまさえの真実に、ちょっとだけ迫ってみたいと思います。                (聞き手 奥田 愛)


   簡単に自己紹介をしてください。


モリ 城北高出身です。高校時代も演劇をしていました、いま県外の大学に通ってます。大学1年です。大学でも演劇部に所属しています。


   モリちゃんは、大学で何を?


モリ この一年なにやってたかと考えたら、やはり演劇ですね。授業の記憶もなくもないんですけど(笑)サークルの方が印象つよいかなあ。演劇に明け暮れています。夜遅くまで作業で残ったり、演出部と宣伝美術の会議がサークル後まであったり。うちの大学は演劇部員の人数が多くて、高校とはだいぶ作り方が違うんです。その分やれることもいっぱいあるし、意見が衝突したりすることもあって、それはそれで面白くて、それぞれ価値観があって、難しいことも多いんですけど。


   なぜひとり芝居をしようと思ったの?


モリ そういう機会があったからですね(笑)。サークルでは人数も多いので、自分の出番自体も少ないですし、私ひとりでがんばっても、作品のクオリティがあがらないっていうか、うまくいってるなと思えることがあまりなくて。だから、ひとり芝居をすると、他の人を気にしなくていいと言えば言葉が悪いんですけど(笑)自分のやりたいようにできるというのと、舞台の上で起こっていることについて責任をとっていかなければならないので、モチベーションが変わってくるし、なんだろー、あとはお客さんにひとりの自分を飽きずにみてもらえるようにすることに挑戦できるということは、とても刺激的だと思うんです。


   モリちゃんはなぜ舞台に立つんですか?


モリ なんででしょう。それを今探しているんですよね。探すために舞台に立っています。


   高校時代の演劇部はどんな感じだったの?


モリ 私最初は何も考えてなかった。一年の夏はひどかったですね。真剣に退部を考えていました。古田先生の駄目出しを受けて、私演劇向いていないのかもーと思っていました。でも先生にやめますというタイミングを逃してしまい、じゃあ県大会の後にやめますって言おうって思っていたんですが、3年のチヒロ先輩が県大会に一緒に出てくれて、すごい楽しそうに演劇に取り組んでるのを見て、あー演劇ってもしかして楽しいかも、と思った矢先に、私以外の二人が辞めてしまって。波乱万丈です。ひとりになって、私どうしたらいいのと思っていました。


   演劇の面白さは?


モリ 一期一会が多々あることですかね。これはいろんな意味で。台本に出会うのも一期一会、高校の時なら、大会に行って他の高校の人と会えるのも一期一会、そのときそのときじゃなきゃできないことというのが、面白い。あと、LIVE感。やっぱヴィデオで見るより生じゃないですか、小さい音とかも聞こえてきそうな感じがいいよねー。すごい抽象的ですけど。
あと、お客さんの反応が自分にすぐ伝わるところですかね。とくにあたしあんまり広いところでやる機会なかったですから。手を伸ばせば届きます、みたいな。ダイレクトデリバリー(笑)。