アンストッパブル


 列車の暴走は初歩的な人的ミスでひきおこされる。安全管理はどうなっているのかと、最初は半ばあきれながら見た。
 日本ではありえないズサンさだ。


 登場人物は、結構ダメダメで、レベルの低い口論など普通にしている。
 しかし、ドラマの進行とともに、そうした設定が生きてくる。決してレベルの高くない人々が、危機にあたって勇気をふりしぼって英雄的行為を見せる、それがこの映画のキモ。
 スーパーヒーローが跋扈する荒唐無稽な映画じゃない。人間が等身大に、リアルに描かれているから、たちはだかる問題の困難さも、登場人物の眼を通して、リアルに観客に伝わる。たかだか時速100キロ強の暴走だけれども、十分にハラハラドキドキできるのだ。


誰が悪いのかをあらさがしするのではなく、英雄的行為を素直にたたえる楽天的なアメリカ的おおらかさこそが、この映画の最大の魅力である。


新幹線大爆破 [DVD]

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 日本よりも、フランスで高く評価された。興業収入は、同時期に公開された「トラック野郎御意見無用」の約半分だったという。
カサンドラ・クロス [DVD]

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 この映画が公開された頃は中学3年で、映画を見に行くという習慣がなかったため、映画館では見ていない。2番館落ちした時に、「サスペリア」との2本立で見た。とても面白く、ぐいぐいひっぱられて映画に入っていったのを覚えている。展開のすさまじさ、めまぐるしさは、鮮烈な印象があるが、今見直したらどうだろうか。
 オールスターキャスト映画、パニック映画全盛の頃でもあり、それらの要素をうまく取り入れた秀作。西ドイツ、フランス、スイス合作。ジョルジュ・パン・コスマトス監督の最高傑作ではないか。

 ジェリー・ゴールドスミスの哀切豊かなテーマソングも印象的。