「本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること」その3


本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること―沖縄・米軍基地観光ガイド

本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること―沖縄・米軍基地観光ガイド


 《内容要約です:つづき》


■16 沖縄返還とは、何だったのか。
 アメリ国務省の発表によると、沖縄返還交渉は「アメリカ外交史上、まれにみる成功例」。基地移転費用の日本政府の支払いが約7億ドル。6500万ドルが、沖縄だけでなく「日本全土の米軍基地の維持・改善費5年分」として充当された。6年目からは「思いやり予算」の名目で、米軍基地の運営費を日本が永遠に払い続ける構造が生まれてしまった。米軍は、沖縄だけでなく日本全体の基地をより大規模に、タダで使えるようになったのである。


■17 写真を撮るときの注意
 「うっかり基地の中に入ったら、たいへんなことになる」というのは甘くて、基地の外にいても、日米地位協定に対応した「刑事特別法」によって逮捕されることもある(懲役10年以下)。日米地位協定は密約の塊。もし密約で、条文の範囲が拡大解釈されていたら、ふいに逮捕されることがあるかも知れない。要注意。


■18 細川首相は、なぜやめたのか。
  細川首相辞任の原因は北朝鮮問題。彼のおかれた状況は鳩山首相辞任のときとそっくり。安全保障面でアメリカと距離をおこうとする日本の首相が現れたとき、いつでもその動きを封じることのできる究極の脅し文句がある。それは「北朝鮮が暴発して核攻撃の可能性が生じたとき、両政府間の信頼関係が損なわれていれば、アメリカは「核の傘」を提供できなくなります。それでもいいのですか」


■19 少女暴行事件
  1995年に起こった沖縄米兵による、女子小学生集団強姦事件。日米地位協定により、実行犯3人が日本側に引き渡されなかったことが大きな問題になり、沖縄県民の反基地感情が一気に爆発した。沖縄の基地集中は、1972年以前、沖縄が何も意志表示できないところで決められたものである。


■20 沖縄の海兵隊はグァムに行く。
  伊波洋一氏が「沖縄の海兵隊はグァムに行く。移転費用92億ドルのうち、60億ドルは日本が出すことが決まっている」と述べた。アメリカの都合というのに、日本は辺野古の新基地を建設し、さらに移転費用を日本が出すという。なぜこんな日本人をバカにしたような計画ができるのか。その理由は、米軍の存在が現在の国家権力構造(国体)の基盤(「米軍・官僚共同体」)だからである。外務・防衛官僚エリートはそのことをよく分かっているのだろう。彼らは定義があいまいな、アメリカとの条約やさまざまな密約、政治資金規制法など、政治家の運命を決めてしまう法律の有罪ラインについて、最終判断を下す権限を持っているため、失脚したくない政治家は、官僚におもねるしかないのである。


■21 日米合同委員会とは何か。
  2004年の沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落したとき、米兵が現場を封鎖し、日本の警察・学長・市長などは中に入ることもできなかった。そうした米軍の権利は密約で決められていて、日本国民には知らされていない。日米地位協定の協議機関である「日米合同委員会」によって、米軍の高官と日本のエリート官僚の間の月2回の会合で合意されている。こうした合意による密約や安保特例法が、在日米軍を超法規的存在にする。「安保法体系」が、日本国憲法にもとづく「憲法法体系」を侵食し続けてきたのである。
  「憲法法体系」は崩壊している。日米安保条約に関して、裁判所は憲法判断をしない(砂川事件最高裁判決・統治行為論。この判決はアメリカ大使の圧力と干渉によって出された)。これによって、安保法体系が憲法(国内法体系)の上位に位置することが決定してしまったと言ってよい。
  密約が官僚の悪事や違法行為かどうかということが問題ではない。外国軍が条約に基づいて数万人規模で駐留し、最高裁がその問題について憲法判断を放棄しているという状況そのものが問題なのだ。長らく政権交代がなく、情報公開制度も生まれなかった日本では、法務省が米軍との調整上、検察や裁判所を裏から操作するチャンネルを確立したことで、官僚組織はまるごと法的枠組みの外側へ移行しているように思える。


■22 いま、日本に何が起こっているのか。
  さまざまな共同宣言や合意文書によって、日米安保条約は完全に変質してしまった。2005年の合意文書「日米同盟:未来のための変革と再編」によって、アメリカの一方的攻撃に協力することを約束させられてしまっている。ここには、日米安保にあった「国連の尊重」も「極東という地域上のしばり」も存在しない。2009年に元官僚の孫崎亨氏が本に核まで、我々日本人はそのことをまったく知らなかった。


■24 アメリカの2つの顔
  アメリカは「国内では民主主義、国外では帝国主義」というふたつの顔を持っている。こうした米軍基地は世界中に存在する。


■25 世界の希望はどこにあるのか。
  我々は、アメリカに戦略的価値の高い基地を無料で提供することで、人類400年の平和への努力を破壊する手助けをしているのはないか。沖縄の基地問題の歴史的意味は非常に大きい。「日本が辺野古の問題で思い切った行動を取れば、世界中の人々が目を覚ます」(チャルマーズ・ジョンソン)「民主党が原点に立ち返って、優位をもってアメリカと対等に交渉し、沖縄に海兵隊は必要ないから出て行ってくれとはっきり言えたら、それが世界の歴史を変える非常に大きな一歩になる」(カレル・ヴァン・ウォルフレン)


■26 フィリピンでできたことは、日本にも必ずできる。
  この状況を改善する方法は単純である。憲法改正である。「2025年以降、外国の軍事基地、軍隊、施設は、国内のいかなる場所においても禁止される」これを国会と国民投票で決議すれば、現体制は終わる。フィリピンでは、1987年に制定した憲法に基づき、米軍基地の完全撤去を実現させている。


■27 「常時駐留なき日米安保」と「アジア共同体」
  本書の結論。「条約に基づく大規模な外国軍の駐留は、絶対に認めてはならない。それは自国の法体系を破壊する」