ダーリンは外国人


ダーリンは外国人 [DVD]

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 漫画家を志望するイラストレーターが、アメリカ人男性と出会い、結婚するまでのプロセスを描く。井上真央、ジョナサン・シェア、大竹しのぶ國村隼。監督宇恵和昭。


 小栗左多里の原作マンガは、国際結婚したカップルの経験にもとづく日常の異文化ギャップを拾い上げ、コミカルに読ませる。ところが「些細な日常的描写」では映画にならないと踏んだのか、本作は結婚に対する父親の無理解と反対、父の死、二人の危機と和解という、手垢のついた日本的メロドラマチックな「事件」をあからさまに並べるという戦略に出る。


 原作を換骨奪胎する、こうした無神経な改変はどうかと思うのだが。さらに、改変されたドラマが、唐突で説明不足なまま図式的に描かれる点に戸惑う。たとえば主人公井上真央の父は、井上真央の国際結婚に反対する。ところが次の登場場面ではなんと病気で倒れ、また次の場面では突然死んでしまう、あれよあれよの展開。父の結婚反対という「障害」が、ドラマの始まる起点になるのではという予感はつかの間、ふたりの乗り越えるべきハードルにならないままに、物語は、作り手の都合で、手垢のついた筋書き通り進行する。


 そもそも、結婚に反対されたカップルが障害を乗り越えて結婚するといったストーリーなら、ダーリンが外国人でなくても成立する。映画の中で描かれる、食器の洗い方が甘い、とか、洗濯の干し方がいい加減であるとか、そうしたカルチャーギャップなら、日本人同士の夫婦の間にもあるギャップでしかない。アメリカ映画が異人種間の結婚を初めて描いたのは、スタンリー・クレイマーの「招かれざる客」(1967)。あれから半世紀がたって完成した本作には、時代と人と人との新たなあり方を切り拓いていこうとする志は微塵も感じられない。


 宇恵和昭という人は、CM界では有名な人らしく、望遠のボケ味をうまく使った「いい絵」を並べてみせるが、イメージ映像的な処理は、かえって空疎な感じを醸し出す。井上真央のコミカルでチャーミングな演技も、誰にでもわかるという説明的演技で、いらだちや不機嫌さを説明しようとする意図が先にたって鼻につく。


 ダーリンを演じたジョナサン・シェアは「クールでさわやかな好青年」といったいでたちを終始崩すことがなく、原作の始終脂汗を流しているようなコミカルさにも欠け、その人間像が浮かびあがってこない。職業はジャーナリストだそうだが、働いている気配もない。何を考えているのかわからない「お人形のような」「都合のいい」登場人物。井上真央が自己中心的で幼いのも、ダーリンの人間像をきちんと描かないせいだとオイラは思う。


招かれざる客 [DVD]

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