週刊エコノミスト2012年7月3日号 塚越健司「拡大する戦場化したサイバー空間「スタックスネット」の脅威とは」


エコノミスト 2012年 7/3号 [雑誌]

エコノミスト 2012年 7/3号 [雑誌]


 「テロとの戦い」を標榜した国が、サイバーテロを行っている。週刊エコノミストの本記事から、その恐怖と衝撃をオイラは感じ取った。


 米「ニューヨークタイムス」によると、2012年6月、イラン中部にある原子力開発施設へサイバー攻撃を行った「スタックスネット」と呼ばれるコンピュータウイルスは、アメリカとイスラエルの共同開発であったことを報道した。


 スタックスネットの目的はずばり、イランの核開発計画に打撃を与えること。実際にに2010年9月、イランの原子力開発施設に侵入し、ウラン濃縮用の遠心分離機約8400台の制御プログラムを稼働不能にした。スタックスネットは、データを盗むだけではなく、インフラの制御装置に入り込んで、その動きを止めたり破壊したり誤作動を起こすことが可能になる。たとえば軍事施設に潜りこめば、その国の防空システムを無力化することもできるし、核弾道ミサイルを勝手に操作して核戦争を引き起こすことだって可能である。


 これはすでに戦争ではないか。そして、この戦争には無関係の人が巻き込まれている。現在までに世界中で10万台以上のコンピュータがスタックスネットに感染した。シマンテックによると、日本でも63台のコンピュータの感染が確認されていると言う。


 国家がサイバーテロを率先して実践し、非常に悪質なウイルスを撒き散らしているのである。そのことに危機感を持つべきだとオイラは思う。それが2次被害を生むことも考えられる。現に、国際ハッカー集団「アノニマス」は、スタックスネットを入手しているという。インターネットでの標的募集(!)では、日本の東京電力も入っていたそうだ。


 日本のマスコミからの情報に頼っている人は、テロ国家をサイバーテロで攻撃することに、それほど違和感を持たないかも知れない。アメリカやイスラエルの行動は正当なものだと考えるかも知れない。しかし、実際は、イランが核兵器を開発している「兆候はない」と、IAEAの報告書は明言している。イランの核開発が「平和利用でない」という明らかな証拠は、今のところ一つもない。