植田佑軌「「生きる力」は乳児期で決まる」幻冬舎ルネッサンス新書


「生きる力」は乳児期で決まる (幻冬舎ルネッサンス新書 う-3-1)

「生きる力」は乳児期で決まる (幻冬舎ルネッサンス新書 う-3-1)


 帯には「一歳半までの親の接し方が子どもの将来をつくる」とある。同じ幻冬舎新書に「子どもの才能は3歳、7歳、10歳で決まる!」というタイトルの本もあった。いったい何歳で決まるんだよ、とオイラは思わず心の中で叫んでしまった。


 しかし、本書の内容はいたって真面目である。泣く行為や食事、排泄などから生まれる快・不快の感情が、どのように人格形成に影響を与えるのかを精緻に論じている。


 たとえば排泄についての記述。排泄によって子どもの膀胱はすっきりして心地よくなる。しかし、おむつが濡れることによって、お尻や下腹部が濡れて気持ち悪くなる。その後泣くと親がおむつを取り替えてくれる。そうすると、不快な状態から快なる状態に変わる。排泄を通じて、自分がどんな状況にあるのかという認識を養うことにつながる。自分が今どんな状況にあるのかという認識は、ひいては社会認識を養うと筆者は言うのである。


 筆者は、紙おむつについても言及する。紙おむつは、排泄をしても吸収が早いため、子どもが排泄をしたという実感を抱けず、泣くという行為によって、自らの力で不快を快に変えていこうとする自発性の発達を疎外する。またエアコンは部屋を快適に保ち、子どもはいつも心地よく快適に過ごすことができるが、体温調整をし環境に適応しようとする力は養われないと説く。


 こうした記述は、なるほどと思わされるものではあるが、実証的な裏付けが書かれていないので、本書の主張が正しいかどうかは分からない。それが本書の最大の問題点であるように思う。「紙おむつより布おむつの方が社会性を養ううえでは効果的である」「エアコンを使わない方が人格形成にとってよい」かどうかは、結局のところ、本書を読む限りにおいては不明なのである。