原田曜平「ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体」(幻冬舎新書)



 年度末。仕事が一区切りついてホッと一息。久しぶりのブックレビュー。


 原田曜平「ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体」は、筆者言うところの「マイルドヤンキー層」を消費の対象と見なし分析した本。「マイルドヤンキー」とは、かつてのヤンキーとは一線を画した「ファッションも精神もマイルドな新ヤンキー」。彼らは消費意欲をもった「優良な若年消費者」であり、未来の日本経済は彼らが牽引していくだろう、とまで言い切る。密着取材とヒアリングにより、現代のマイルドヤンキー層の実相を描こうとした書である。


 だが本書の読後感は残念ながらあまりよくない。違和感は、おもに「上から目線」による断定的な筆致にある。たとえばこんな感じである。


 「彼らは知らないことを努力して知ろうとはしません」「知的好奇心のようなものはそれほどありません」「選択肢が多いことは苦痛でしかなく」「知らないものは、欲しがらない、欲しがれない。それがマイルドヤンキーの本質と言えるでしょう」(194ページ)


 あまりにも身も蓋もない書きっぷりである。よく読むと筆者の基準はどうやら筆者がリーダーをしている博報堂ブランドデザイン研究所に集まる高学歴の若者たちにあるようで、そりゃ彼らと比べると、普通の人々である「マイルドヤンキー層」はバカに見えるわなあと思う。


 また少々書き飛ばし気味なのも気になった。一例を挙げると、マイルドヤンキー層を指して「地縁を大切にするという非常に保守的な、まるで戦前の日本にでも立ち返ったようなコンサバティブな意識(26ページ)」などと書かれている。地元を大切にするだけで「戦前の日本」だなんて! オイラには、彼がリーダーをしている博報堂の若者研究所に集まる若者の方が、むしろ特殊な人たちのように思えるのだが。


 内容的にも斎藤環「世界が土曜の夜の夢なら」、五十嵐太郎「ヤンキー文化論序説」等の二番煎じに思える。しかし先行研究に関する記述はいっさいなし。いろいろな意味で、もう少し愛情があってもいいのになあとオイラは思った。


 関連エントリ
 ■[演劇][教育]不良文化についての一考察/その1
 http://d.hatena.ne.jp/furuta01/20120926/1348734630
 ■[本/文学]五十嵐太郎編著「ヤンキー文化論序説」河出書房新社
 http://d.hatena.ne.jp/furuta01/20120923/1348350654
 ■[本/文学]斎藤環「世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析角川書店
 http://d.hatena.ne.jp/furuta01/20120925/1348611393
 ■[雑誌]週刊東洋経済2013年3月2日号「特集 ヤンキー消費をつかまえろ」
 http://d.hatena.ne.jp/furuta01/20130302/1362238566