城北高「ほどける双子」雑感(四国高校演劇サミット2014)


 一方、オイラの勤務校は、大岩真理作「ほどける双子」を上演した。この3月に卒業する演劇部3年、「モリちゃん」の卒業公演となる「一人芝居」である。3年間の集大成にしようというモリちゃんの熱意が、1年生の部員たちに化学反応をもたらした。


 「ほどける双子」に出会うまで、一年生は迷走していた。11月に部を継承したものの、自分たちが何をやりたいのかがつかめず、不毛なミーティングをして時間をいたずらに費やした。


 これに対し、3年間演劇にきちんと向き合ったモリちゃんは「演じるとはどういうことか」をよく知っていた。役に没入し、舞台の上で感じ、心を震わせ、感情を持続してみせた。一人芝居の中で、果敢にも見えない相手役の声を聞き、リアクションしてみせた。母と娘の葛藤、妊娠や出産、育児など、高校生にはまだまだイメージしにくい台本の難解な部分を、自分なりに消化し、自らの血肉に変えてみせた。今回の公演のヘルプに入った後輩部員に、モリちゃんは「舞台のうえで役者は何をするべきか」を身をもって示してみせた。


 「モリちゃんのような演技をしてみたい」と、芝居後、一年の部員は語った。やっとやるべきことが見えてきた。4月に行われる新入生歓迎公演の演目も、すんなりと決まった。オイラが百万語を費やすより、モリちゃんが実際に演じた45分の方が、「演劇とは何か」ということを、はるかに雄弁に語っていた。モリちゃんは、先輩としての仕事を果たしてみせた。そうしたブレイクスルーをもたらした「ノトススタジオ」という聖地の記憶とともに、その演技は勤務校の演劇部の遺伝子の中に、強固に残るだろうとオイラは信じている。