阿波高「読み聞かせ「走れメロス」」ほか(四国高校演劇サミット2014)



 これは「聖地巡礼」である。
 オイラはそう思っていたし、終わった今でも、強くそう思う。


 2月16日(日)、四国学院大学ノトススタジオで開催された「四国高校演劇サミット2014」に上演校として参加した。ノトススタジオは「演劇のための特別な空間」。専門に設計され、広さや閉鎖性が絶妙で、舞台の空気を観客も感じることができる。コンクールが開催される多目的の公共ホールにはない、演劇に特化した独特のたたずまいが魅力的な空間だ。


 だからここにはプロの演劇人も集う。つい2週間前には、青年団が公演を終えたばかり。高校生には、こうした場所にまとわる空気を感じてほしかった。徳島にはこういう豊かな空間はない。


 また高校生のボランティアスタッフや大学生スタッフも協力的で、リハ時間も長くとらせていただいた。コンクールにつきもののピリピリした感じがなく、リラックスして芝居に没入できる、その素晴らしさを、オイラは強くかみしめることができた。


 3本の芝居が上演されたが、今回は阿波高「読み聞かせ「走れメロス」」(作/よしだあきひろ)についてとくに触れておきたい。クラスで授業中居眠りをしている男子学生(中学生?)が、ちょうど授業で教わっている「走れメロス」の夢を見るという趣向のドラマだった。「読み聞かせ」というタイトルのとおり、テキストの読み手が舞台上にいて、その読まれた様子がパラレルに舞台上で再現される。ただしテキストを単純に説明したものではないところがミソ。王様がいまどきの若者のようなタメ口で喋ったりするし、脱力するような展開があったりする。舞台装置も、教室にある掃除道具や机椅子、カーテンとおぼしき白布を使って「走れメロス」の物語世界を表現してみせる。あくまで居眠りをしている学生の主観に彩られている「走れメロス」という体裁である。


 本作の役者は、決してうまく演じようとしない。テキストの読み手は、とてもぶっきらぼうだし、ドラマは友情や信頼の大切さを謳いあげるベクトルには向かわない。周到に脱力の方向に抑制され、作り手が、テキストを適度に茶化してみせているのが印象に残った。テキストと距離を保ちながら、教育的に安全な表現である(その代わり手垢のついた)「友情や信頼の大切さ」に情緒的に流れることを潔しとせず、批評的な視点をテキストに対し保ち続けながら作品作りを進めていることが、「テキストと表現の葛藤」を生み出し、いい意味で舞台に緊張感を醸し出している点に好感が持てた。