前泊博盛「本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」」創元社
本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」 (戦後再発見」双書2)
- 作者: 前泊博盛,明田川融,石山永一郎,矢部宏治
- 出版社/メーカー: 創元社
- 発売日: 2013/02/28
- メディア: 単行本
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重要な本である。そしてわかりやすい。日米地位協定の何が問題か、はっきりとわかる。誰もがこの本を読むべきだ。帯にある「全国民必読の書」という言葉は、あながち誇張ではない。
安保が、米軍が、日本の主権をいかに壊しているか、それが放置されたままになっているだけでなく、さらに悪い状況になりつつあることが、本書を読むと手に取るようにわかる。
書かれている内容は、とても説得力があり、リアルだ。たとえば、1959年の砂川事件。米軍基地をめぐる最高裁の審理において、最高検察庁はアメリカの国務長官の指示どおりの最終弁論を行ない、最高裁長官は、大法廷での評議の内容を細かく駐日アメリカ大使に報告したあげく、アメリカ国務省の考えた筋書きに沿って判決が下された。その様子が、アメリカの政府公文書からはっきりと分かる。米国務長官の指示はとても具体的だ。「検察官は次のように述べてよい」などと回答している。これほどの直接的な指示がアメリカから出されていたとは!
ページをめくるたびに、戦後日本の最大の問題がはっきりと浮かび上がる。つまりそれは、安保を中心とするアメリカとの条約が、我が国の法体系よりも上位に位置することで、日本国憲法を骨抜きにできるロジックが体系化されており、それが日本の主権を大きくむしばんでいるということである。
そのやりかたは、他の事例にも応用される。2012年に改正された原子力基本法には、こっそり「わが国の安全保障に資することを目的として」という文言が入れられたそうだ。これによって、安保同様、原子力に関する国家側の行動は、すべて法的コントロールの枠外に移行する可能性がある、と筆者は言う。こうすることで「どんなにムチャクチャなことをやっても、憲法判断ができず、罰することができない」という安保そっくりの構図ができあがる。
TPPも同じ。条約は国内法に優先する。「TPPとは、いままで安全保障の分野だけに限られていた、そうした「アメリカとの条約が国内の法体系よりも上位にある」という構造を、経済関係全体に拡大しようという試みなのです(267ページ)」と筆者は言う。
米軍、原発、TPP。日本の国益を損なう問題には、なぜかしら共通点があって、その本質が何なのか、今まではぼんやりとしか分からなかった。だが本書を読むことで、それがはっきりとわかる。法体系の大切さ、主権が損なわれる怖さが実感できる。
問題意識を、できるだけ多くの人と共有したい。高校生にも読ませてみようと思う。
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■[本/文学]「本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること」
http://d.hatena.ne.jp/furuta01/20120212/1329126641
■「日米地位協定入門」内容要約はこちら
http://d.hatena.ne.jp/furuta01/20130420
http://d.hatena.ne.jp/furuta01/20130419