「本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること」


本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること―沖縄・米軍基地観光ガイド

本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること―沖縄・米軍基地観光ガイド


 2/9・10のエントリに要約文を載せた。要約にはかなりの時間を要した。関連項目をネットでチェックしながら丁寧に読み進み、再読・三読したからだ。断片的に知っていたことが、本書を読むことで、つながり、霧が晴れるように分かる。熟読する価値が十分にある。そう思わせる熱と力がみなぎる本だった。


 2004年の沖縄国際大学普天間基地所属の米軍ヘリが墜落したとき、米兵が現場を一方的に封鎖・占拠し、大学関係者の必要最小限度の立ち入りはもとより、沖縄県警の現場検証さえできないまま、米軍によって残骸は撤去された。これに対し、日本政府は抗議すら行わなかった。日本は独立国なのかという憤りが沖縄を包み、3万人が参加した抗議集会が行われた。


 そのとき国民は知らなかったが、アメリカと日本の間に密約がかわされていた。軍用機が墜落した場合、米軍の代表者は、事前の承認なくして私有地にも立ち入ることが許されるという合意事項がそれである。そうした合意事項は主権者である日本国民には知らされない。日米地位協定の協議機関である月2回の「日米合同委員会」において、米軍の高官と日本のエリート官僚の間で決められて運用される。必要があれば検察や裁判所へ伝えられ、求刑や判決の結果を左右する。


 こうした密約や安保特例法が、在日米軍を超法規的存在にしてきた。国内法より条約である安保条約の日米地位協定の取り決めの方が上位にある。日米安保条約に対しては、裁判所は基本的に違憲かどうかの憲法判断をしないということになっており(砂川事件最高裁判決・統治行為論。この判決はアメリカ大使の圧力と干渉によって出された)、これによって、安保法体系が憲法(国内法体系)の上位に位置してしまっている。つまり、密約や安保特例法に基づく「安保法体系」が、日本国憲法に基づく「憲法法体系」より上位にある。これが日本なのである。


 政治家ですら知り得ない、そうした密約などを外務・防衛官僚エリートはその手に握り、条約や法律を解釈する権限を独占する。彼らは定義があいまいな、アメリカとの条約やさまざまな密約、政治資金規制法など、政治家の運命を決めてしまう法律の有罪ラインについて、最終判断を下す権限を持っているため、失脚したくない政治家は、官僚におもねるしかない。しかも官僚は政治責任を問われることはないのである。


 この本を読むと、基地問題は、沖縄だけの問題ではなく、この国のかたちに関する問題であり、日本の根幹に関わる「主権の問題」であることがはっきり見えてくる。在日米軍がいることが、憲法を形骸化し、官僚エリートに力を与えているのである。だからこそ「条約に基づく大規模な外国軍の駐留は、絶対に認めてはならない」と本書は言う。大規模な外国軍の駐留は、自国の法体系を破壊するのである。


 オイラは何も知らなかった。断片的に知っているつもりになっていた事柄が、本書を読むことで、きれいにつながる。mcintoshさん、だからこれ読むべきですよ。ウチの政経の教師にも、どう思うか意見を聞いてみようと思う。


 内容要約はコチラ http://d.hatena.ne.jp/furuta01/20120209
          http://d.hatena.ne.jp/furuta01/20120210