南雲吉則「50歳を超えても30代に見える生き方」講談社+α新書


50歳を超えても30代に見える生き方 「人生100年計画」の行程表 (講談社+α新書)

50歳を超えても30代に見える生き方 「人生100年計画」の行程表 (講談社+α新書)


 分かっていたのに買わされてしまった。してやられた、という感じ。


 まずタイトルがコマーシャル的には絶妙である。「50歳を超えても30代に見える生き方」。何よりも具体的だ。オイラのように、人生の節目を迎えて、自分の年齢のことが気になる者は、思わず手に取ってしまう。


 表紙には著者の写真。帯には「誰でも20歳若返る!」とあって、著者の写真から「こう見えて56歳なんです」と書かれたフキダシが出ている。確かに南雲吉則氏、若く見える。説得力がある。そして「〇〇万部突破!」オイラはついふらふらと手にとり何も考えず買ってしまった。「若く見られたい」という一般化された「常識」の誘惑に、オイラはからめとられたのだ。


 本書の内容は、「生活習慣や食事の改善で若返りをはかろう」というもの。よくよく考えれば、写真の著者が若々しいからといって、本書の内容が妥当であるとは限らない。南雲氏はもともと若く見える風貌の持ち主かも知れない。また、今の時代、若く見せるための方法は、いろいろある。写真なら普通に修正を施すこともできる。南雲氏がそうであるとは言わないが、カツラや化粧、もっと過激なアンチエイジングの方法もある。だから、著者の写真が若々しいといっても、それだけで本書の内容が妥当であるかどうかは分からない。


 オイラは、何も南雲氏が読者をだまそうとしていると言っているのではない。若々しい写真が使われているからと言って、本書の内容を実践すれば著者のようになれると読者が短絡的に思い込むとしたら、それは違うと言っているのだ。まず著者が若く見えることと、本文の内容に関連があるとは限らないことに気づくべきである。


 もっとも、本書の内容をすばらしいと思い込んで、自己暗示にかかったのように、がむしゃらに生活改善を実践する人がいたとしたら、それはそれで一定の効果があるかも知れない。「信じる者は救われる」という言葉もある。そうした効果をオイラは否定はしないが、それは「科学」というよりも、むしろ「宗教」であると言った方がしっくりくる。


 好意的に解釈すれば、具体的には書かれていないだけで、科学的なデータの裏付けはあるのだろう。南雲氏は、医師として生活改善のアドバイスをしているから、これらの実践が効果的なことは、経験的に熟知しているのだろう。だが、オイラはしっくりこない。それはこの本の売り方がコマーシャル的に絶妙なせいだとオイラは思う。コマーシャル的にうまくやればやるほど、うさん臭く見える。著者が教祖に見えるのである。筆者は実証的に書くべき。そうでないと、巷にあふれる俗流健康本と、本書がどう違うのか見分けがつかない。


ハマー・フィルム怪奇コレクション DVD-BOX VI 異境の美女編

ハマー・フィルム怪奇コレクション DVD-BOX VI 異境の美女編


 小学校の時、テレビで見た映画が忘れられない。砂漠の果ての幻の王国には、不老不死の女王がいて、不老不死をもたらす炎の中に身を投じたおかげで3000年の命を保っている。昔の恋人の生まれ変わりのような青年と出会い、恋に落ちた女は、青年と共に永遠の愛を生きるために、青年を誘い3000年ぶりに炎の中に身を投じる。しかし2度炎に入った女は、老化が一気に進み、あっという間に老婆になって死ぬ。ひとり取り残された青年は、不老不死になって呆然とするといったストーリーだった。H・R・ハガード「洞窟の女王」を原作にしたハマー・プロ製作の「炎の女」という映画であることを知ったのは、ずっと後のことだった。