「イップ・マン 序章」
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1930年代、広東省仏山で、ブルース・リーの師匠としても知られる、詠春拳の師匠である葉問ことイップ・マンが、日中戦争で中国を占領する日本の軍人を相手に戦いを繰り広げる香港カンフー映画。ドニー・イェン、サイモン・ヤム、池内博之。監督ウィルソン・イップ。
大作である。最近の香港映画には大作が多い。中国・アジア市場も視野に入れ、マーケティングもきちんと行われているのだろう、女性観客に対する目配せも欠かさない(本作ではイップ・マンは愛妻家として描かれている)。だがマーケティング重視の作品作りによって、猥雑で濃い部分、過剰な部分が薄れた作品が多い気がする。計算された美しい画面や美術が、アクション映画の持つ原初の衝動的なエネルギーを殺ぐのである。
本作は日中戦争期の広東を舞台にしており、日本軍が悪役である。普段は温厚で不必要な戦いを好まないイップ・マンが、日本人の空手の道場に乗りこんで、日本人10人相手に組手を行い、全員を倒したあと、名前を聞かれて「私は中国人だ」といったタンカを切るものだから、日本人のオイラは見ていて居心地が悪い。日本人が悪役であるだけなら、ステロタイプであるから、それほど気にはならない。しかし、主要観客である中国人のナショナリズムをテコにして、イップ・マンに「中国人代表」を名乗らせ、反日のヒーローに祭り上げる盛り上げ方にはひっかかる。そういうやり方は、いつの世でも施政者のすること。そして、映画の向こう側に、反日ナショナリズムを受け入れている中国の観客と、彼らを支配している政治的イデオロギーが透けて見えて、ちょっとうんざりするのである。
もっとも、イップ・マン自身が生前詠春拳を「日本人には教えてはならない」と言っていたことは確か。また空手家である日本人将校である三浦は、イップ・マンの強さに敬意を抱く男として描かれていて、それなりの配慮が払われているように見えるが、その佇まいは、血に飢えた野蛮な狼のように見えて、イップ・マンの対極にあり、敬意や相互理解という意味では、どうにもズレたところに作品が立ち上がっているようにオイラには見えたのである。
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本作は、ブルース・リー主演のこの映画と似ている。ブルース・リーはイップマンから詠春拳を習った。ドニー・イェンはブルース・リーのように、自らを神話化しようとしているのかも知れない。