城北高演劇部 夏公演 「ミイラ取りの午後」口上

 高校生に請われて、本日行われる城北高校演劇部夏公演のパンフレット向けに拙文を書いた。以下、再録である。


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 手探りの夏休み


 本日はご来場いただきまして、ありがとうございます。城北高演劇部顧問のフルタです。
 城北高校演劇部は、この夏2度目の夏公演です。たいてい一回の公演に3カ月くらいの準備期間を取ります。ひと夏に二度も公演をやるなんて、初めてのことです。今回は、3週間ほどの準備期間で本番を迎えることになりました。


 考えてみれば、夏までの歩みがのんびりしすぎていたのかも知れません。昨年の11月に、今のメンバーが部の中心になってから、とてもぜいたくな時間の使い方をしてきました。まず結論の出ないミーティングを延々2カ月もおこないました。そのあとの新年度当初に行われるはずだった新入生歓迎公演は、時間管理のまずさから、GWに延期になり5月末に延期になりついには中止になったのです。そのせいか今年度は1年がひとりも入部していません(悲)。


 半年間、芝居をまともに作ったことがない演劇部。顧問も部員も、今まで伝承されてきたやり方ではうまくいかないことに気がつきました。6月、活動の内容を大きく見直しました。ある人の助けを借りて、基本練習から大きく変えました。そしてとにかく一度舞台に立ってみよう、舞台に立たないと、自信も芽生えない。それが目標の芝居が、7月の「茶色の夜明け」。一人芝居でした。スタイルも試行錯誤です。20分という短い芝居でしたが、これについては、最後までやり切ったことを評価しないといけないと、オイラは思っています。


 そして今回の「ミイラ取りの午後」です。架空請求詐欺を題材にしたこの芝居は、従来演劇的なドラマを紡いできた城北の芝居からすると、ありえないほど異質で違う芝居です。舞台の上で、ほとんど役者は目を合わせないし、説明的なセリフもバンバン飛び交います。顧問のオイラの演劇観からしても、今までならとうてい容認することができなかった内容です。


 セリフを受けて反応する、こうしたメカニカルな反応の連続こそが、演劇を演劇たらしめるもっとも大切な要素だと考えて、ここ20年は芝居作りを続けてきました。しかし、今回はその考えを、はっきりと放棄しています。従来のスタイルに対するこだわりは、今のメンバーをむしろ縛ってしまうことになる、そう考えたからです。今までの演劇の枠に役者を押しこめてしまうのではなく、今の役者に何ができるのかを根本に据えて芝居作りをしないといけない、そう考えた結果、おのずと今回のスタイルに行き着いてしまったのです。そうした作風の変化に、もっとも驚いているのは、実は顧問のオイラなのです。


 これが舞台でどういった成果に結実するのか、実は顧問も試行錯誤であります。部員のみんなへ。小器用に振る舞えないことは、決してマイナスではありません。おかげで新しいことを考えることができました。必要が発明を生み出すのです。一から考える「手探りの夏休み」、それはそれでとてもエキサイティングだったとオイラは強く思っています。


                        古田 彰信