金沢21世紀美術館





 今日は、噂の金沢21世紀美術館。2004年10月オープン。


 市街地のど真ん中にあり、アクセス抜群。なのに敷地は広い。円形(円盤状)をした、側面全面ガラス貼りの大きな建物。建物の回りには、必要以上に樹木を植えることはしていない。見通しがとてもよい。設計SANAA。

 建物の入場口が4カ所もある。円の中心部の有料ゾーンと無料ゾーンに分かれ、無料ゾーンは通り抜けができる。無料ゾーンは、なんと午後10時まで開いているらしいので、アートにあまり関心のない人でも、「近道」に利用できそうだ。いや、これは冗談ではなく、美術館が、市民に「開かれている」ということ。


 中に入ってみる。人が多い。普通の美術館の雰囲気とは、まったく違う。子どもや、ふだんはあまり美術に関心のなさそうな人も目立つ。ちょうど「子どもの巨匠時代」という展示も行われていて、金沢の子どもの作品が、ピカソ13歳の時の石膏デッサンなどと並んで飾られている。スゴイ。

 また、変な形をした自転車が、館内を走り回っている。パトリック・トゥットフオコという人の作品らしい。申し込めば、誰でも乗れるそうだ。


 壁は白く、開放的な雰囲気。光を取り入れる中庭がいくつも設けられていて、中はとても明るい。展示室は、トップライトで、フラットで均一な光が当てられている。そして、展示室ごとに天井の高さが違う。作品ごとの要求する空間を十分に意識した設計である。

 有料ゾーンは順路もあるが、近道をすることもできる。全部見終わってから、もう一度、ある作品をみようと思ったときに、順路をイチから辿っていかなくてもいいわけである。とても、フレキシブル。

 

 有料ゾーンの展示は、開館記念展「21世紀の出会い−共鳴、ここ・から」。展示作品は、現代アート、そして空間作品が多い。空間性を強く意識させられる。

 刺激的な作品がいくつもあったが、いくつか印象的な作品をあげると、オラファー・エリアソンの「反視的状況」。「ステンレス・スチールでできた250個の突起物が、長軸15m、短軸5mの巨大な楕円形の球体に、フジツボのように取りつけられた彫刻である。球形の中には階段を上って入ることができる。中に入ると、コーンの先端に空いた穴から覗く外の光景と自分の姿が、ステンレス・スチールに乱反射し、360度、万華鏡に取り囲まれるような体験をすることになる。見る人が視点を少し動かすだけで、全く異なる像を見せる(展覧会ガイドより)」


 レアンドロ・エルリッヒという人の「スイミング・プール」という作品もまた印象的だ。「光庭に設置されたプール。明るい色のライムストーンのデッキが周囲を縁取り、リゾート風の雰囲気を醸し出す。光庭に出てプールのわきに立ち、波立ったプールを見下ろすと、あたかも深く水で満たされているかのように見える。だが、そこには服を着た人がいるのを見て、そのプールが実は偽物であることに気づく。透明のガラスの上に約10cmの深さの水があるだけで、ガラスの下は空間となっている。・・・・晴れた日には、波によって拡散された光がきらめきながらプールの底に影を落とし、水の中にいる感覚を味わうことができる(同)」


 そして、無料ゾーン。有料ゾーンに負けないほど、展示が充実している(先に紹介したピカソの石膏デッサンの展示場所は、無料ゾーンである)。これは、とてもいいと思う。多くの人たちが、気軽に芸術に触れることができるからだ。

 あとで聞くと、金沢市は、市内の小中学生にすべてここに来てもらって、芸術に触れてもらおうというプログラムを実行中だそうだ。ここでは、「開かれた美術館」というコンセプトが、十二分に生かされている。「開かれたOO」とは使い古された言葉だが、これほど徹底して「開いている」アート空間を、いまだかつて見たことがない。


 僕はとても好印象を持った。何度も足を運びたくなる美術館だ。願わくば、この勢いを、ずっと持続してもらいたいものだと思う。その鍵は、今後のソフトと、地方自治体の姿勢にあると思う。


金沢21世紀美術館