バカ政ホラ政トッパ政


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 (ネタバレ炸裂です) 
 1976年9月に公開されたヤクザ映画。東映実録路線の一本。昭和30年代、バカ政(菅原文太)ホラ政(中山仁)トッパ政(ケーシー高峰)の3人が、銀座の興行権を握り、のし上がる。そこへ割り込んできた文太の兄貴分の野口(中丸忠雄)。そして利益を得ようとする田所(成田三樹夫)。兄貴分と仲間との板挟みになって悩むが、抗争になりエスカレートして、最後は文太、中山、ケーシーが銃撃戦の中殺されるのであった…。


 バカ政〜というだけあって、あまりに独善的な主人公3人組。自分たちのルールで突っ走る。荒唐無稽と紙一重の描写の連続。たとえば、夜明けまでに銀座から出て行けと言われた3人組が、夜明け近くに「夜明けまでに何も起こらなければ(大丈夫だ)」と言って、夜明けの時間に向けて、秒読みを始める。夜明けの時間が来てホッとする。しかし、少し考えれば分かる。夜明けまで待つのだから、相手がアクションを起こすのは、夜明け後だろう! 
 しかも、秒針のない時計で「夜明けまで10、9、8…」などとやるのは、何かの冗談なのか? いや、そうに違いない。


 ラストはもっと強烈。仇敵成田三樹夫が抗争の中、殺された。3人組は直接手を下していないが、向こうは殺したと思っている。そんな中「堂々と乗り込んでいって向こうが手も足も出せなかったら、こちらの勝ちだ」と葬式に乗り込んでいく。ここでも勝手なルール設定。火に油を注ぐだけだと思うのはオイラだけか。


 で、ここでも秒読みなのだ。衆人環視のもと、車を降りて線香台まで往復100メートル。(あと50メートル、40メートル…)心の声が聞こえる。いやがおうでも緊張は高まる。しかし見ながら思う。3人は焼香後に襲われることを考慮しないのだろうか。相手の顔をつぶして、いくらその場で「勝った」としても、後で殺されたら元も子もない。


 で案の定ハチの巣にされるのである。さすがバカ政。ハイリスクで一人よがりすぎて、笑えるほどに切なく軽い。ラストは文太のストップモーションに「終」の文字がかぶって幕。
 あまりに荒唐無稽だが、役者の存在感は抜群。文太、中山、ケーシー、成田、伴淳三郎など、とてもいい。古きよき昭和の風情が感じられる。東映実録物のフォーマットに則った一本。