鎌田慧「日本の原発危険地帯」
- 作者: 鎌田慧
- 出版社/メーカー: 青志社
- 発売日: 2011/04/10
- メディア: 単行本
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筆者が原発の立地した日本各地を回って、それぞれの町が原発を受け入れたプロセスを克明に記したルポルタージュ。原発を持つ地域の声が生々しい。伊方原発の反対闘争の歴史についても、知らなかったことを知ることができた。
読みながら、オイラの中で原発問題が整理されていく。
原発推進の何が問題なのか。それは原発推進自体が、モラルハザードを引き起こす無責任なシステムだからだとオイラは思う。
電力会社は、原子力損害賠償法によって、1200億以上の賠償からは免責され、総括原価方式で建設費を電気料金に上乗せできる。事故を起こしても責任を取らなくていい。
地方自治体は、電源三法による交付金目当てに誘致を進める。ひとときは多額の交付金で潤うが、いったん交付金が切れたら、水ぶくれした財政を補填するために、さらなる交付金を求めて2号炉3号炉を受け入れざるをえなくなる。悪魔のような原発依存の仕組み。ばらまかれるカネによって、住民は分断され、伝統産業は破壊される。
カネと無責任さは、あきらめと思考停止を呼ぶ。「すべてをカネによって測る価値観のひろがることが、放射能汚染のように恐ろしい(321ページ)」という本書の言葉が印象的だ。
しかし、そうした状況は、何も原発に限ったことではない。この国の行政と政治・社会の従来のありようそのものである。そのシステムは、我々の回りにもある。教師を取り巻くシステムにもあるし、生徒を取り巻くシステムの中にもある。それは、無責任と思考停止を我々に強要する。
原発に対する意識を変えることは、そんな従来のシステムを変えることである。オイラの回りの人の意識を変える。オイラは学校というオイラのいる場所でそれをやる。