武田邦彦「原発事故 残留汚染の危険性」ほか

原発事故 残留汚染の危険性

原発事故 残留汚染の危険性

隠される原子力・核の真実―原子力の専門家が原発に反対するわけ

隠される原子力・核の真実―原子力の専門家が原発に反対するわけ

原子炉時限爆弾

原子炉時限爆弾


 6月9日に学校で原子力に関する研究発表をするので原稿を書き始めた。いろいろな文献の知見を引用して、高校生向けにまとめていく。プレゼン用の資料もつくらなければならない。原発事故については、テレビでさんざ解説しているから、オイラよりも詳しい高校生はゴマンといるだろう。典型的な文系人間であるオイラには、今何が起こっているかなどということも分からない。


 武田先生にはつくづく感心する。「原発事故 残留汚染の危険性」では、何が起こったのかを、問題点をあげながら分かりやすく整理する。とても明快だ。
 福島原発事故の原因は、「運転のミス」ではなく「設備のミス」であるというのが筆者の主張。地震津波に対する設計が弱かったことにも問題があったし、保安院など役人が最終的責任を感じていない点に問題があると指摘。そして「原発地震で壊れるように設計されている」という指摘は、逆説的だが原子力を取り巻く矛盾を突いていて鋭い。


 小出裕章氏「隠される原子力 核の真実」はわかりやすい。図表をうまく使って、必要な部分に必要な説明が入れられている。あとがきによると、忙しい小出先生に代わり、編集者の方が、文章をわかりやすく平易に書き換えたとのこと。この試みはとてもうまく成功していると思う。
 同じ専門家である武田先生と大きく違う点は、エネルギー問題、環境問題、日本国憲法の問題など、大きな社会的な問題にも筆者が目をむけている点だ。この本を読んでいるのは専門的なことが知りたいからだと、最初は思っていて違和感があった。しかし何度も読み返すと、筆者の意図はよくわかる。我々は大きな物事の本質を忘れてしまいがちである。発展途上国との間には格差があって、我々はエネルギーを湯水のように使っているということを。大きな問題を考えるなかに、専門的な内容を位置付けていくことによって、絶えず自分の立ち位置を確認する誠実さが感じられる好著。


 この2冊と比べると「原子炉時限爆弾」は、いかにもジャーナリストが書いた本という感じである。書きぶりにメリハリがあり、書き慣れている感じがする。刺激的・挑発的言葉をあえて使用する箇所もある。また図が多数挿入され、わかりやすさに力点がおかれている。初版が2010年の8月だったので、現実を見事に予測した警鐘の本である。
 ビッグネーム三人。書きぶりは三者三様である。