勤務校での人権集会「原発を考える」


 現代は複雑で価値観の多様化した時代である。そんな時代だからこそ、いままさに「師」が求められている。
 反原発に関しては、とくにそうだ。政府や東京電力の言葉は信用できない。国民に正しい事実を伝えない。我々は何を信じていいか分からない。我々は偽りの平穏の中にいる。
 しかし、我々には、小出裕章先生がいる。小出ほど「反原発の師」にふさわしい人物はいない。彼はユング言うところの「老賢者」だ。原子力工学というもっとも正統的分野の専門家であり、40年以上も反原発の立場から発言してきた。ブレない。常に正しい側にいる。素人にもわかりやすい。分からないことは、わからないと言う。そして今も反原発の先頭に立って精力的に活動している。最近出版された本書も、とてもわかりやすく、伝える工夫がなされている。


原発のウソ (扶桑社新書)

原発のウソ (扶桑社新書)


 最近明らかに潮目が変わったと思う。たとえば反原発のデモ。今は2万規模だが、1年後には、何十万の人たちがデモに参加し、反原発に反対する市民運動になって、国会に押し寄せる、そんな予感がする。ムシロ旗を立てた「反原発」運動の先頭に立つ人物が、小出裕章である。


 首相は「国策の失敗」と明言した。村上春樹のスピーチも大きい。あらゆる場所で、反原発の狼煙があがっている。


勤務校で「原発を考える」発表をおこなった


 6月9日、オイラも、勤務校の人権集会の枠を借りて「原発を考える」と題し、生徒と教員の、1時間40分ほどの研究発表をおこなった。小出裕章先生の知見をもとに、他で得た知識をアレンジして、プレゼンソフトを作っての発表をこなした。オイラの持ち時間は一時間以上。全校生徒の前で、これほどの長い時間を喋ったのは初めて。


 オイラが喋ることができたのも、オイラの心の師である小出裕章氏の存在があったおかげ。先生がつけた道がなかったら、オイラは自分の考えをまとめることすらできなかっただろう。小出先生なら、ここは何と喋るだろうか、どう問題提起するだろうか、そう考えながら喋った。


 集会のあと、結構反響があった。ほっとした。「なぜ人権問題なのか知らなかった。まったく認識不足だった」という教員も少なからずいた。オイラの力はわずかだけれど、こうした地道な活動を積み重ねていくことで、人々の意識を変えていくことができる、そう信じて実践していきたいと思う。


 時間がなくて、触れられなかったこと、政治的にすぎて触れられなかったことも多い。原子力が2.5兆円産業であり利益関係者が群がっていること。原発を受け入れた地方公共団体電源三法のこと。核廃棄物のこと。
 原子力を取り巻く状況には、現代の日本の問題点が、ぐっと凝縮して詰めこまれている。マスコミが伝えないことを、わかりやすい言葉に変えて伝え、健全な批判力と育てていくのがオイラの使命であると思っている。