春山満「僕にできないこと。僕にしかできないこと。」幻冬舎


僕にできないこと。僕にしかできないこと。

僕にできないこと。僕にしかできないこと。


 本当にすごい人がいる。


 本当にすごい人がいる。進行性筋ジストロフィーという不治の病に侵され、首から下が動かないのに、バリバリの会社社長。障害と経営者という、オイラの乏しい想像力では失礼ながら思ってもみなかった組み合わせ。おまけに、会社経営を通じて、自分の回りを変え、そして社会の常識を変えていく。そのバイタリティが本当にすごい。


 春山は総合ヘルスケア業の「ハンディネットワーク インターナショナル」を経営している。たとえば「バリアフリー自動販売機」。取り出し口が高い位置にあり、コインをバラッと流し入れるタイプの自動販売機は、春山が大塚製薬と提携して開発したもの。春山は言う。「車椅子対応の自動販売機は、車椅子の人々にジュースやオロナミンCを買ってもらうためのものじゃない」実際の売上げは、何百倍何千倍の一般の人からあげるのである。


 そのために、当時はまだ使われていなかった「バリアフリー」という言葉を使い、考え方を根付かせていく。車椅子対応の自動販売機は、ミニスカートや妊婦さん、子供を連れている人々など、健康な生活を送っている人々にとっても使いやすい。それは、導入先にもイメージアップになり、導入を断る理由にならない。今では、公共の場所に置かれている多くの自動販売機がバリアフリータイプである。


 着眼と発想によって、従来の常識を覆し、社会を変えていく。もちろんそれは、春山氏が、体が不自由になったから気づくことのできた知見である。難病という悪運に巡りあったことをマイナスととらえず、プラスに変えていく。自分にしかできないことを成し遂げる。
 「なくしたものを数えるな」と彼はいう。「残っているものを120%活用せよ」と彼は言う。春山の言葉は、何よりも説得力がある。どんな不運や悪運に巡り合ったとしても、決してあきらめずに前向きに生きていく。「命を知り、命を立てる」宿命の裏には立命がある。どうしようもない運命にかんじがらめにされるだけでは駄目だ。その姿にオイラはとても励まされる。


 「難病になって以来、僕の身体の筋肉は毎日、毎日、崩壊し続けています。今、この瞬間ももちろん、その崩壊過程にあります。
 他人から見ると四、五年前の僕と変わりがないように見えるかもしれません。しかし、病魔は確実に僕の身体を冒し続けています。手足の末端から始まった「筋萎縮」が、やがて首の筋肉をむしり取り、肺と心臓にまで及んでくるのは、そう遠い日のことではないのでしょう。肺が収縮を止め、心臓が鼓動を止める。その日が来るのを受け止める覚悟はできています。
 とはいっても、それは僕だけが例外だということだけではありません。考えてみると、健康な人でも実は毎日、筋肉は崩壊に向かっているのです。それが五十年、六十年というワイドレンジなのか、僕のように十年というショートレンジなのか、という差があるだけなのです。
 僕は「人生というのは、本当に捨てたものじゃないよ」と伝えたいと思っています。そして、その原点にあるものは、当たり前の幸せのありがたさ、今日一日のありがたさなのです」(128ページ)


 彼の言葉を高校生に聞かせたい。オイラは心からそう思う。


 http://www.mbs1179.com/haru/rss.xml

 春山満氏のことはラジオで知った。この人もラジオと親和性が高い。ラジオで流れたから、オイラは強く感銘を受けたのだろう。
 毎日放送ラジオ/日曜9:15〜9:30「春山満の 若者よ、だまされるな!」


 テレメンタリー2008「春山 満の妻 由子が語る、出会いから共に歩んだ35年、そしてこれから・・・」