ジェフリー・フェファー「権力を握る人の法則」


「権力」を握る人の法則

「権力」を握る人の法則


 挑発的なタイトルである。地位と権力を握るためにはどうすればいいか論じた本である。オイラは最初冗談かシャレで書かれているのかと思ったが、ジェフリー・フェファー教授は大まじめである。


 「権力を得る」と言っても、「出世する」というくらいの意味なんだよという解釈もあるかも知れない。だとしたら、この本は出世のハウツー本ということになる。しかしあくまで「権力(power)」である。権力闘争についての記述もある。生々しい。やはり本書は「権力を得る」ためのハウツー本である。


 教授は、人々の成功と失敗から、法則を引き出そうとする。多くの人々の実例があげられている。それらには「なるほど」と思うが、そこから引き出されたものは、法則というよりも「教訓」といったもので、客観的なデータに基づいて、科学的な何かが引き出されているわけではない。あの人の場合はそのやり方でうまくいったかも知れないが、他の人がやっても成功するとは限らないのでは? という疑問が、読んでいる途中オイラの頭にずっと浮かんでいた。教授は「リーダーシップ本は眉唾だから信用するな」というが、著者の主観と思い込みで書かれているという意味においては、本書も数多のリーダーシップ本と変わりないのではないか? 


 また、教授は、権力を得ることの効用を強調する。権力を得た方が長く健康に人生を楽しめる可能性が高いという。ロンドン大学の疫学研究者マイケル・マーモットの研究の、頂点にいる人の方が、最底辺の人より死亡率が4倍も低く健康であることを例に出す。なぜそうなるか。それは自分の状況を自分でコントロールできるからだ。だから健康のためにも、あなたは権力を得なさい、と。本書の冒頭もこれではじまり、本書の結びもこれで終わる。


 しかし、オイラは思う。頂点に立って自分の状況をコントロールできるようになったから長生きするのではなく、健康な人だから頂点に立つことができたというだけなのでは? 頂点にのぼりつめたから健康になるのではないのでは? そもそも不健康な人は組織の頂点にのぼりつめるのが難しいだろう。


 責任の重さとプロセスの大変さを考えると、組織の頂点に上り詰めようとするのは、ストレスが高く命を擦り減らすなあと、虚弱なオイラはつくづく思う。