犬島に行く



 瀬戸内海に浮かぶ岡山県の犬島に行くのは今回で5回目。劇団維新派の新作「風景画」の鑑賞が目的。いままでは野外に度肝を抜く大規模な装置を設置する公演が多かったが、今回は、犬島の干潟を舞台にして(!)、セットや屋台を組まないという。


 9月23日の開場は12:09、開演は12:39。中途半端な時間になっているのは、干潟の干潮時と芝居の時間をシンクロした時間設定。屋外の昼間だから、照明などもほとんど使わない。役者の身体のみに依拠して大がかりな舞台を持たせるわけで、これは大きなチャレンジだろう(つづく)。


 四国から犬島は遠い。直島などは高松から船が出ているが、犬島は岡山まで行かなければならない。JR岡山駅からさらにかなりかかる。今回は直通バスが出たので岡山駅から1時間少しで着いたが、JRとバス、船を乗り継いで行こうものなら、時間待ちも合わせると、2時間半くらいかかってもおかしくない。



 岡山と犬島はこちらの地図で(クリックすると拡大)。ブログ「犬島時間」よりいただきました。


 自宅を午前5時(!)に出て、オイラが犬島に着いたのは、10時10分。何と5時間もかかってしまった! 芝居の開場は12時09分なので、それまでの時間は「犬島 家プロジェクト」を巡ることにする。
 「犬島 家プロジェクト」とは、犬島の民家の中にある廃屋などを利用して、アートとして再生しようという試み。50人くらいの集落の中に、4カ所(F邸、S邸、I邸、中の谷東屋)のアート空間が作り上げられている。先に造られた直島の家プロジェクトと比べると、こじんまりしている感じだが、建築設計をSANAAの妹島和世、アートを柳幸典、アートディレクターとして長谷川祐子が担当しており、4ケ所でひとつの作品といった趣。


 F邸。下の写真は、その中にある「山の神と電飾ヒノマルと両翼の鏡の坪庭」。水盆に光る半円のネオン管のヒノマルが映って、円形に見える仕掛け。ギラギラした感じが現代日本の過剰さを表しているようにも見えた。




 中の谷東屋は、いかにも妹島和世デザインの屋根と柱の休憩所。材質は金属で、中に入ってウサギの耳型の椅子に座ると、声が屋根に響いて異空間にいる感じ。I邸は、戦争とそれを見つめる瞳の映像がスクリーンに映し出されて、庭園に目を転じると、現実の花畑。その対比に、黒澤明の「夢」をほうふつとした。