タカギカツヤ作「またあしたっ」中間報告


 オイラが顧問をしている演劇部の芝居であるが、順調に稽古が進んでいる。現在立ち稽古中。公演は11月19日の17時30分から、県郷土文化会館あわぎんホール大ホールにて。顧問であるオイラの仕事は、演技・演出の支援。



 「またあしたっ」という台本のスケールの大きさに、当初は役者の器量がついていかないという問題があったが、入念に本読みをやり直して、動きをイメージさせ、かつ力みを押さえることで、だいぶ改善された。セリフも台本を尊重しながらも、動きに合わせて細かく調整され、スムーズに流れるようになった。本読みをきちんとやると、立ち稽古が楽になる。実質3日で半分以上の立ちが一通りできた。ちょっと出来過ぎなので、今後は逆に引きしめて稽古に臨みたい。


 奥を向けて教室のセットを配置した


 セットは、壁と学校の権威を模した5本の4メートルパネルを奥に配置し、机を放射状に配置した。机を奥に向けて並べたのがミソ。勉強する時間を描く芝居なので、机に向かうと役者が皆奥を向いてしまう。高校生が奥に立てられた暗色の4メートルパネル5本に向かい、観客に背を向けて勉強する姿は、とても不気味。無意識に権力や制度に取り込まれている現代の我々を、よく象徴したセットだと思う。

 
 「またあしたっ」の「あかんたれ女子3人組」は、勉強ができないから、前を向いていられない。すぐに観客席側を向いてしまう。その「振り返る」という舞台上の行為が、体制や権力に対する反抗や逃避、挑戦を連想させる。教室を前から見ていると、後ろを向く高校生は「あかんたれ」だが、後ろから見る「振り返る」という行為に観客は「ほっとする」。だから、あかんたれ女子3人組に観客は感情移入できるという仕組みである。


生徒イスは拘束具である


 それにしても、生徒イスにきちんと座ってしまうと、振り返るのは難しい。これは前々から知っていたことでもあるが、今回改めて実感した。身体が前の黒板に向けて固定されてしまう。拘束具のよう、という表現も、あながち極端ではないと思う。演技がしにくくて本当に困る。あの椅子が決まって学校に採用されているのは、生徒を後ろに向けさせないためという、実は学校の深慮遠謀があったのだ。


 ともかく、振り返る(観客の方を向く)のは、とてもエネルギーが必要。それでも抑圧から逃げたいと思うのが人間らしい精神。そうした人間らしいエネルギーと葛藤の満ちあふれた芝居になれば、「またあしたっ」は成功だろう。あと2週間少しで公演である。