「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル」



 トム・クルーズ主演の大ヒット・シリーズ第4弾。アメリカ政府から切り離されたエージェント、トム・クルーズ扮するイーサン・ハントと彼のチームが、核戦争を企む敵の陰謀を阻止しようとする。監督は「アイアン・ジャイアント」「Mr.インクレイディブル」のブラッド・バード


 今時のアクション映画らしく、アクション・シーンのつるべ打ち、ハラハラドキドキの2時間、一時も息つくヒマも与えないテンションの高さは折り紙つきで、観客のドギモを抜く。見たこともないようなシーン、ビックリのカットも結構あって、作り手が必死でアタマをひねり体を張って作っていることがよく分かる。たとえば、主人公の乗った車が川に落ち、命を狙われるシーンで、車内を映したアングルのまま、路上の車が川に落下し浸水するまでを、カット割なしで撮影して見せるというのは、前例がないのではないか。観客に主人公と同じ視点を提供し、何が起こったのか混乱させるという、よく考えられた見せ方のテクニック。こうした卓越した場面が矢継ぎ早に繰り出される。「アイアン・ジャイアント」のブラッド・バードらしく、映画魂が感じられる一作。


 ただ、こうしたノンストップのジェットコースター的アクション映画は、近年たくさん作られていて、オイラにはどれも同じように見えてしまう。加えて、トム・クルーズ扮するイーサン・ハントがスーパーマンすぎて、感情移入ができない。あまりにも完全無欠すぎる。いくら大変なミッションだとは言え、綱渡りのような展開になることが予想できるのに、あえて好んで危険に身をさらそうとする主人公の行動がコワイ。砂嵐の中、敵を追うシーンでは、トム・クルーズは機械のように不気味に走って敵を追い詰め、その姿からはオイラ、ターミネーターT1000を連想した。



ターミネーター2」よりT−1000


 こうした映画のヒーローは、スーパーマンだけれど、どこかに弱点を持っていたり(ヘビがコワい=インディ・ジョーンズ)、本人がリスクに身をさらすことを不本意と思っていたり(不運な男=ジョン・マクレーンBYダイ・ハード)するのが、人間らしさを付与するためのセオリー。そういう部分があれば感情移入できる。ところがこの映画の主人公ときたら、ミッションをゲームのようにこなすスーパーエリート。人間の弱さを完全に克服し、機械のように戦う、国家に忠実なアンドロイドのよう。オイラの中では、グローバリゼーションの最先端にあって、企業や国家のために日夜戦う企業戦士や官僚の姿と重なる。あなたは何のために戦っているの? 原発に対峙する映画「祝の島」に感銘を受けたオイラには、地に足のついていないスーパーエリートの姿は、どこか非現実的で遠い世界のつくりものに映る。

 

 「祝の島」http://d.hatena.ne.jp/furuta01/20120114/1326528575