山田玲司「非属の才能」光文社新書
- 作者: 山田玲司
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2007/12/13
- メディア: 新書
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滅多に行かない本屋でフラリ購入。読みながらふと思い出したのが「資本主義卒業試験」。どこか共通点があるなあと思ってよく見ると、作者は同じ「山田玲司」。そういえば「資本主義卒業試験」の時も、同じ本屋でフラリと買ったのだった。「漫画家山田玲司」のことは何も知らないのだが、オイラを引きつける何かがあるのか、なんとなく買ってしまう。2007年初版。
筆者の言う「非属の才能」とは、「みんなと同じ」という価値観に染まらなかった人々が持つ才能のこと。空気が読めない、回りから浮いている、のけ者になったことのある・・・・そうした人こそむしろチャンスがあると言う。日高正博(総合演出家)、オリバー・ストーン、柳美里、黒柳徹子、エジソン、長嶋茂雄、けらえいこ、のっぽさん、さかなクン、そして山田玲司・・・・。「非属の才能」を持つ多くの有名人の例をあげながら、そうした力こそが幸せに至る力になるのだと筆者は説く。
筆者の書き方は主観的で、オイラには一面的にすぎるように思われる箇所も多い。たとえば、整理整頓してしまうことでアイデアが生まれにくくなるから「机は片付けなくていい」と筆者は言う。だが、机を汚いままにしているオイラの実感からすると、物をなくしたり、物事を秩序だてて考える妨げになったりすることもまた事実である。
物事には両面がある。ひきこもりは人生のジャンピングチャンスと筆者は言う。しかし教師としてのオイラの経験では、引きこもる学生は精神的に追いつめられた状況に陥っていることがほとんど。引きこもっている現実を前向きの機会とはなかなかとらえられない。そもそも精神的に余裕があるなら引きこもりなどしない。
成功した者が、引きこもった自らの体験を振り返って、あれはジャンピングチャンスだったと言うことはできるかも知れない。しかし、クリエイティブな場面で成功できる人は少数であり、「非属の才能」を持っていても成功できない者の方がほとんどなのである。「非属の才能」があるから野茂英雄や桑田佳祐やジョン・レノンになれるのではない。「才能」があるから成功するのである。自らの主張に都合のいい文脈で成功者の体験を並べ、凡庸さを否定し、あたかも「才能は非属から生まれる」と語るのは本末転倒であるとオイラは思う。
ただ、学校という保守的な凡庸なシステムの中で疎外感を覚えている一部の感受性豊かな中高生にしてみれば、人生のエールとなり、理論武装を助ける本ではないか。学校という同調圧力の強い場所で折り合いをつけて生きざるをえないわけで、彼らにはこうした本が必要である。オイラの勤務校の高校生にも紹介したい欲求に駆られた。
そしてオイラもまた、社会や学校という凡庸なシステムの中で疎外感を覚えている一人である。ひとごとではない。だからオイラは本屋で本書を手に取ったのだと思う。