週刊朝日2012年10月26日号「ハシシタ 奴の本性」



 週刊朝日の記事をめぐって、ウェブ上に下のような記事が氾濫している。

 週刊朝日は特集「ハシシタ 奴の本性」を掲載した。記事は、橋下氏の名前を「ハシシタ」と呼んでおり、「ひり出した汚物」「正視できない」「市議員、府議員含めて社会のクズ」「部落」「ヒトラーより下劣」「ファシズム」「薄汚い」「ツイッター投稿の匿名世界を分析するのはうんこにも飛びつく評論家に任せる」などと記述。「DNAから本性をあぶり出す」方針で「政治手法は検証しない」としている。佐野眞一氏による連載で、共同取材は今西憲之氏、村岡正浩氏。編集長は河畠大四氏。
これに対し、橋下市長は「血脈主義、身分制に通じる極めて恐ろしい考え方だ」「朝日新聞社からきちんと考え方をお聞きするまでは質問には答えたくない」と反論した。http://togetter.com/li/391330


 この記事中にある引用記述は、意図的なのかどうかはわからないが、主語がなく不正確である。あたかも週刊朝日が橋下氏への罵詈雑言を書きなぐっているように読む者をミスリードし、結果として多くの人々の怒りの矛先を、週刊朝日朝日新聞社に向かわせている。


 記事中、本文を参照しながら、オイラがおかしい、厳密でないと思った点は以下の通り。

  • 1 「テレビがひり出した汚物」と言ったのは辺見庸氏である。
  • 2 「ハシシタ」と呼んでおり」とあるが、本文中に佐野氏が「ハシシタ」と呼んだ箇所はない。
  • 3 「正視できない」のは、「新党に参加表明した政治家連中のこと」であり、「社会のクズ」と書かれたのは、「打算づくでパーティ券を売っていた」国会議員と市議員、府議員についてである。正確には「人間のクズ」と書かれており、「社会のクズ」とはどこにも書かれていない。
  • 4 「ファシズム」については、中国・韓国と戦争したいと言い出しかねない日本維新の会に出席していた90歳の老人を佐野氏が評した言葉であり、橋下徹氏に直接向けられた言葉ではない。
  • 5 「薄汚い」も、橋下氏に直接向けられた言葉ではなく「遊興街」につながる言葉である。
  • 6 「ヒトラーより下劣」という言葉は、「記事」本文にはどこにも記されていない。


 記述につられ寄せられたコメントの多くは、週刊朝日朝日新聞社を口汚く攻撃するものがほとんど。多くの人がアジテートに乗り、ソースとなる週刊朝日の本誌を見ないまま、結果的に橋下氏と日本維新の会を肯定する側に回らされている、とオイラは思う。


日本維新の会>橋下代表、全国遊説スタート
 「日本維新の会」代表の橋下徹大阪市長は20日午前、次期衆院選をにらんだ全国遊説を鹿児島市でスタートした。各種世論調査で支持率が下落するなか、「一枚看板」の橋下氏が全国に足を運んで存在感を示し、再浮上を図る。
 http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/house_of_representatives_election/?1350710213


 関連エントリ


 □[メディア]部落解放同盟中央本部「「週刊新潮」(2011年11月3日号)の掲載記事および新聞広告に関する抗議文」解放新聞2011年11月28日 http://d.hatena.ne.jp/furuta01/20111127/1322472725


 □[本/文学]佐野眞一「あんぽん−孫正義伝」小学館
   http://d.hatena.ne.jp/furuta01/20120527