第37回四国地区高等学校演劇研究大会
審査結果は以下のとおり。
最優秀賞・文部科学大臣賞
■徳島県立城ノ内高等学校『三歳からのアポトーシス』大窪俊之 作(顧問創作)
(長崎総文へ)
優秀賞・全国高等学校演劇協議会長賞
■愛媛県立川之江高等学校『みえにくいアヒルの仔』越智優 作(既成)
優秀賞・四国高等学校演劇協議会長賞
■徳島県立富岡東高等学校羽ノ浦校『避難』川瀬太郎 原案 村端賢志 作(顧問創作)
(春フェスへ)
優良賞
■徳島県立小松島高等学校「補習授業は暑くて長い」田上二郎 作(顧問創作)
■高知県立高知追手前高等学校「戦場のピクニック」フェルナンド・アラバール 作 (既成)
■香川県立坂出高等学校「全校ワックス」中村勉 作 (既成)
■愛媛県立松山東高等学校「海がはじまる」曽我部マコトと松山東高校演劇部 作 (顧問生徒創作)
■高知県立春野高等学校「いかけしごむ」別役実 作 (既成)
■香川県立丸亀高等学校「いつかのさくら製麺所」豊嶋了子と丸高演劇部 作 (顧問生徒創作)
(審査員長水沼健氏の講評)
で城ノ内高校「3歳からのアポトーシス」。正直題名からわからなかった。どういう意味なんだろうと。「3歳からの」まではわかったんですけど、アポトーシスってなんだろうとか、台本結構ウィキペディアを開きっぱなしで読みました。で途中で閉じました。といっても、調べて読んでいってもわかんないなっていうのであきらめて、これはどのように見たらいいのかわからないまま、昨日もみさせてもらったんですけれど。一番印象的だったのは、生徒さん(俳優)が、この作品に対してすごく主体性をもっているということ、まあその高校生の俳優が、どの程度理解できてももうだいぶ調べながらやっているんだろうと思うんですけれども、それにしてもこの難物に対してどのような取り組みをしているのか、いうふうなところが大変そうだなあと思ったんですけど、俳優が「わからない」というところをとても肯定的にしかも主体的に取り組んでいる、それが一番すごく好感を持ちました。でまあ視覚的な演出、あるいは音に対する感覚に対する鋭さっていうものが、非常に面白かったですね。一番面白かったのは、こういうまったく難しい言葉を作品にするうえで、すごく一貫したユーモアというものが底に流れている。というところがみてとれて、これは非常に僕は、実際笑える部分もありましたし、そういうユーモラスな演出をしていったというのは、ユーモアの種類としてもすごく高度で知的な扱いをしていて面白かったですね。とくに高校演劇こういう種類の作品と出会える、そういう体験ができるというのがちょっと驚きです。大変面白かったです。ただ意味はわからなかったです。教えてください。
(審査結果の発表の後の、審査についての水沼健氏の説明)
どのような経緯で決まったかということなんですけれど、一位の城ノ内高の作品は、僕は自分の中では決まっていたんですけれど、他の先生に対してどのように説得しようかなあと考えて審査会に臨みました、ところが、そういう心配も杞憂に終わって、言ったら一発で決まったようなものです。
この作品に対する僕の印象は、演劇作品を「見た」というよりは、演劇を「体験した」「目撃した」というものです。これは高校の演劇大会のみならず、普通に芝居を見にいっても、なかなか得難い体験なんですね。そのことを感謝したいと思います。意味はもちろんわからないんですけれど。さらに、生徒さんの演技、態度、作品、創作に対する態度全体が好感がもてた。大きな疑問というものにめぐりあって葛藤しているというのが、僕はすごく嬉しかった。少なくとも答えにめぐりあうよりも、疑問にどのようにめぐりあうかっていう方が、人生にとって意義があると思います。そういう自分の気持ちを形にしていただいた作品だなあと。そういう演劇でしかできない表現、演劇である必要性というものを見せてもらったなあという感想で、僕はこの作品は一番に推したいなあと思っていました。そして他の先生ともその方向が共通したので、この作品が最優秀ということになりました。