映画館文化の衰退と進むデジタル化


キネマ旬報 2013年2月下旬決算特別号 No.1630

キネマ旬報 2013年2月下旬決算特別号 No.1630


 映画監督の想田和弘氏のツイッターに書かれていた言葉にビックリ。とある政令指定都市唯一のミニシアターの館主が言うには「去年の高校生の来場者、たったの5〜6人」とのこと。去年の高校生の来場者が5〜6人? 昨日の、ではなくて? 何かの間違いではないか?と最初思ったほどだった。


 ティーンエイジャーはミニシアターには行かない。ミニシアターの入場者層の中心は、今やシニアである。若者は経済的にも文化的に弱者。半年待てば100円レンタルで見られるのに、交通費や食事代もコミでウン千円も出して映画館へ行くのは馬鹿馬鹿しい、そういう考え方が今や当たり前。またテレビで喧伝される映画を追うだけで精一杯では、単館系のマイナーな映画など視野に入るわけもない。


 そもそもオイラの住む地域には、ついこの間まで単館系の映画館すらなかった。まずは映画館からだ。5年ほど前に、オイラの住む市の閉館した映画館が賃貸に出されていたことがあって、市民映画館として分割出資して、復活させられないかと考えた。だが保健所による営業許可、プリントの借出、機材や場内設備、税理・社会保険など会社運営の知識、運営費に月どれくらい必要なのかなど、知らないことだらけで、忙しさにとりまぎれて十分動くことができなかった。


 ミニシアターを立ち上げるハードルは、もはや絶望的に高い。入場者数の減少に加え、映画館のデジタル化問題が拍車をかける。「12年末現在でデジタルを導入したスクリーンは約2800に達し、設置率は昨年の60%から一気に広がって、85%を超えた模様。上映素材もDCP(デジタル・シネマ・パッケージ)が主流になり、いよいよ配給会社がすべてデジタル素材に切りかえる時期も迫っているとみられている」(キネマ旬報20103年2月下旬号/242ページ/和田隆氏の記事)とのこと。デジタル上映システムの初期投資が必要なうえ、機材のバージョンアップにも負担がかかる。


 映画のデジタル化の波は、既存の映画館にも及ぶ。35mm映写機に代わり、デジタル機器を導入するべきかどうか決断を迫られ、閉館した映画館も多い。下は、2010年以降に東京で閉館した映画館のリストである。
 

銀座テアトルシネマ (2013年5月31日閉館予定)
銀座シネパトス (2013年3月31日閉館予定)
シネマサンシャイン松戸 (2013年1月31日閉館予定)
王子シネマ (2012年12月9日閉館予定)
シアターN渋谷 (2012年12月2日閉館予定)
浅草名画座、浅草新劇場、浅草中映劇場 (2012年10月22日閉館)
浅草世界館 (2012年9月25日閉館)
浅草シネマ(2012年9月17日閉館)
新宿国際名画座、新宿国際劇場 (2012年9月9日閉館)
上野東急 (2012年4月30日閉館)
パルコ調布キネマ (2011年9月11日閉館)
池袋テアトルダイヤ (2011年5月29日閉館)
シネセゾン渋谷 (2011年2月27日閉館)
恵比寿ガーデンシネマ (2011年1月28日閉館)
シネマ・アンジェリカ (2011年11月31日閉館)
渋谷シアターTSUTAYA (2010年9月30日閉館)
フジサワ中央 (2010年8月31日閉館)
渋谷シネフロント (2010年1月22日閉館)
シネカノン有楽町1丁目 (2010年1月28日閉館)


 (2010年以降、東京の映画館が閉館ラッシュでヤバイ・・・・
    http://matome.naver.jp/odai/2135269808066975701 )


 キネマ旬報の前述の記事によると、2012年に新たに開業した映画館は25スクリーン。閉館は63スクリーン。映画館数は18年ぶりに減少した2011年よりさらに減少、シネマコンプレックスの開館も2サイトと、年間最少の出店数。


 また富士フィルムは映画用フィルムの製造販売を今春に中止、米コダック社は倒産と、映画のデジタル化にともない、業界は大激変の様相を呈している。映画館で観る映画にこだわるオイラにとっては、気になる動きである。


映画館(ミニシアター)のつくり方

映画館(ミニシアター)のつくり方


 映画のデジタル化に関連して、だいぶ前に読んだ上記の本をレビュウしようと思い、狭い家の中をさがし回ったが、出てこない。クソォ。