香取一昭/大川恒「ワールド・カフェをやろう!」日本経済新聞出版社 ほか


ワールド・カフェをやろう

ワールド・カフェをやろう


 「ワールド・カフェ」というミーティング形式をご存知だろうか。カフェにいるような気軽な気分で、参加者が数名に分かれたテーブルで雑談し、途中でメンバー移動を行ない、議論を発展させていく形式のミーティングである。各テーブルには、模造紙が置かれ、アイデアや議論の内容を書きとめていく。メンバー移動で後からそのテーブルにやってきた人も、前にどんな会話があったのか、分かるようになっている。少人数で話し合いながら、参加者全員が話しあっているような深い理解と一体感が得られるのがミソ。


 オイラの回りでは、あまり実践されていないミーティング形式であり、教育手法として取り入れることができるかも知れないと思って本書を手に取った。実践例も数多く掲載され、カフェ・ホストの具体的発言まで例示されており、手引書としても使える。気軽な雑談形式で、初対面同士でもすぐに打ちとけられ、やらされ感がなく、コストもかからない。アイデア次第で雑談もまた教育的に活用できる一例だと思う。


 そもそもオイラは雑談そのものが教育的な営みであると考えている。斎藤孝「雑談力が上がる話し方」(ダイヤモンド社)によると、次のような雑談の効能があげられている。知らず知らずのうちに影響される、好奇心の幅を広げることができる、雑談で人と話すことによってモチベーションがアップする、何より人と人とのつながりを確認することができる。「その場にいる人たちと同じ空気を共有するため、場の空気を作るために雑談があるのです(20ページ)」


雑談力が上がる話し方――30秒でうちとける会話のルール

雑談力が上がる話し方――30秒でうちとける会話のルール


 しかし、雑談の効能を教育に生かすということについては、学校はほとんど考慮してこなかった。そこで、雑談のできる場所と機会を高校生に積極的に提供することで、雑談を積極的に生かした教育内容を作ってみようと思い立って、オイラは今、いろいろと企んでいる。


 オイラの勤務校には、「雑草(あらくさ)編集室」と名づけられた人権教育の部屋がある。4月8日のブログにも紹介したが、「じんけん雑草(あらくさ)」という啓発紙を編集発行しているのでこの名がある。この部屋を模様替えをし、書類をどけて観葉植物や調度品を置き、コーヒーを淹れ、高校生にこっそりふるまうことを考えている。別名「カフェ・ド・アラクサ」。コーヒーの香りのする学校の一角。やりすぎると管理職から目をつけられそうなので、一応「こっそりと」(笑)。