京大カンニング問題


 「まさか山形とは」教育関係者に衝撃(毎日新聞


 ナイーブすぎる見出しである。


 たかだかカンニングである。クラスのおとなしいアイツや、真面目なあの子でもカンニングをする。少し年期の入った教師なら、そういう現場を何度も見てきているはずだ。仮にカンニングした生徒が、自分の県の出身の生徒だったとしても、オイラなら衝撃は受けない。ただ「そうなのか」「そういうこともあるだろう」と思うだけだ。


 別の見方をしてみよう。カンニングの責任の一端が、学校や予備校にあるとすれば、関係者がことさらに衝撃を感じることはあるかもしれない。しかし、山形県の教育が、カンニングを助長する教育をおこなうことなど考えられないし、するはずもない。


 もっとも、山形県教育委員会や、出身校の管理職は、マスコミ対応などでおおわらわだろう。それは、別の意味で、彼らにとっては「衝撃的」である。山形県の教育関係者であることだけで、責任を追求されたり、好奇の目で見られたりする。理不尽であり不条理だ。


 今回の事件は、
 〇難関校の受験での、学業優秀な学生の不祥事である。
 ○デジタル・デバイスを用いた新手のカンニングである。


 という意味で、過剰に取り上げられているが、もう一度言う。「たかがカンニング」である。「教育関係者に衝撃」といった大仰でステロタイプな言い回しは、必要以上にことを大きくするだけで、正確ではない。また、カンニングをした生徒に対しても、マスコミの姿勢は、結果として必要以上に社会的制裁を課すということにもつながり、教育的とは言い難い。


 本文をよく読んでみると、県教委の高校教育課長が「まさか山形出身者とは(知らなかった)と、驚いた口調で言った」だけの話。どうしてもこの手の見出しをつけたいのなら「「まさか本県出身者とは」と高校教育課長驚く」とでもしないと、「大変な事件を引き起こしてしまった。山形の教育界の大問題だ!」と、生真面目な教育関係者がそう思いこんでいるように受け取れる。


 大仰に教育問題を煽り、ミスリードして、誌面やニュースを埋め尽くし、政治や経済、国際情勢の本質的問題を意図的に隠蔽するのはヤメにしてください。


「まさか山形とは」教育関係者に衝撃/毎日新聞 3月3日(木)2時49分配信

 京都大や早稲田大など4大学の入試問題が試験時間中にインターネットの質問掲示板「ヤフー知恵袋」に投稿された事件は2日、投稿に関与したとみられる山形県の県立高校を卒業した仙台市在住の男子予備校生(19)が浮上し、急展開を見せた。山形県の教育関係者や仙台市にある予備校には衝撃が広がり、深夜まで事実関係の確認や報道対応に追われた。【林奈緒美、和田明美、須藤唯哉】

【入試ネット投稿】仙台の予備校生関与か 逮捕状請求へ

 山形県教委には2日夜、報道各社からの問い合わせで、入試問題投稿に関係した予備校生が山形県出身という情報が入った。県高校教育課の阿部和久課長は県立の進学校の各校長への確認作業に追われた。毎日新聞の取材に対し阿部課長は「まさか山形出身者とは。校長から確認してもらっている最中だ。該当する大学を受験した予備校生はいるようだが、確定的な話はまだ入ってこない」と驚いた様子で語った。

 また、予備校生が卒業した高校の教頭の家族によると、教頭には午後11時ごろ、電話で連絡が入り、慌ただしく自宅を出て高校に向かったという。家族は「予備校生が卒業生らしい」との毎日新聞の取材に「えっ、そうなんですか」と驚いた様子だった。

 一方、この予備校生が通っていたとみられる仙台市青葉区にある大手予備校の仙台校には2日夜、報道陣が詰め掛けた。女性職員は「すべて名古屋市にある本校で掌握している。こちらは何も分からない」と繰り返した。詳細については「何も分からない。答えられない」と述べた。

 同校から出てきた仙台市太白区の高校1年の男子(16)は「何でそんなことをしたんだろう。(東北地方と聞いて)驚いた。センター試験で通って京大を受験できたのに……」と話した。