疋田智・小林成基「自転車はここを走る!」


自転車はここを走る! (エイムック 2344)

自転車はここを走る! (エイムック 2344)


 こんな本を待っていた!
 「自転車の車道走行が原則」というのは、極めて当たり前のことなのだが、一般に認知されていなかった。昨秋、警察庁が「自転車の車道走行」の徹底を掲げてから、人々の意識も少しは変わりつつあるように思う。本書は自転車の車道走行についての入門書。こうした書物が売れるかどうかは疑問だが、社会的な意味はとても大きいと思う。書かれているのは、自転車通勤に必要な情報ばかりだ。もし学校の自転車安全教育の担当になることがあれば、この冊子を高校生に配りたいものである。


 前にも紹介したが、自転車の歩道走行は危険である(詳細はコチラhttp://d.hatena.ne.jp/furuta01/20110919)。車両のルールさえきちんと守れば、車道走行の方が、はるかに走りやすい。ただし、問題は、法律(道路交通法)も道路整備も、自転車の走行を十分に想定していない点だ。どう走ったらいいかわかりにくい場面にしばしば出くわす。本書は、そうした自転車乗りの疑問に答えてくれる。


 たとえば、
 ●左折専用レーンがある場合、自転車は直進していいのか?
 こういう場所ですな。



 自転車は車道の左側を走行する。そのまま突っ切ると、左折する車は、まさかの直進に急ブレーキをかけ、自転車にはクラクションが浴びせられることになる。しかし、法律的には、なんと自転車は道路の左端をそのまま直進するのが正しい。左折する自動車は一時停止して待たないといけないのである。


 本書は、そうした法律や道路状況の矛盾点をあげながら、道路行政のありかたを考えさせる内容になっている。ほかにも、
 ●交差点の横断歩道に自転車横断歩道帯があるとき、そこを通らなければならないのか?
 (横断歩道帯の多くは、歩道に接続されているので、一度歩道に入らないと横断歩道帯を通行するほうことはできない場合が多い)
 ●T字路を直進する場合は、赤信号で自転車は止まらなければならないのか?
 ●バス専用レーンを走っていいのか?
 こうした疑問に答えてくれている。これは今までにない内容だと言えるだろう。


 日本の道路の多くは、効率と速度を重視した自動車だけの道と、法的知識など知らなくていいと放置された社会的弱者が無秩序に集まる歩道に二分されている。これは、日本の縮図であるとオイラは思う。歩行者をはじめ、交通弱者が安全に通行でき、共生できる場所に作りかえていくことが必要である。そのためには、本書の疋田智・小林成基氏のように、社会に声をあげ発言していくことが、健全な社会を作るうえで大切だろうと思う。


 車道か歩道かという選択は、大袈裟に言えば、どう生きるかという選択だと思っている。オイラは誇りをもって自転車に乗りたい。