ビー・バップ・ハイスクール


ビー・バップ・ハイスクール [DVD]

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 (結末に触れています)
 最近不良映画ばかり好んで観ているのは、オイラの勤務する演劇部の学校が今秋上演する芝居のため。1985年東映トオル仲村トオル)とヒロシ(清水宏次朗)の留年ツッパリ二人組の、今日子(中山美穂)へのほのかな純情と、喧嘩に明け暮れ、ついには最凶の戸塚水産との抗争に勝利するまでを描く。原作は、きうちかずひろの漫画。監督は「デビルマン」(!)の那須博之


 喧嘩でしか自己表現できない男たちの祝祭的暴力が延々と続く。見せ方がとても派手。走行中の電車の窓から不良が次々に数メートル下の川に投げ込まれたり、かなり高い商店街のアーケードから、トラックの荷台に飛び降りたり、「どうだっ!」という威勢のいい掛け声が聞こえてきそうなアクションはそれ自体が見せ場。むやみにアクロバティックなのは、80年代に全盛を風靡したジャッキー・チェンなどの香港アクションの影響があるのだろう(もちろんセントラル・アーツのプログラムピクチャーであるゆえ、ヤクザ映画リスペクトは言わずもがな、である)。


 大暴れする不良高校生のおかげで、必ず、周囲の物は壊されるわガラスは割れるわ、屋台や店舗は壊されるわ、はた迷惑な状況になるが、喧嘩の当事者である当の本人たちは、遠慮や反省はまったくなし。むしろ盛り上げるためには多少の破壊は当たり前、といった感じ。お祭りだから仕方ないか、とも思うが、もちろん周囲に迷惑をかけ巻き込まれる人もいるということは容易に想像できるわけで、不良映画のロケに協力してくれる人のいい協力者の厚意を踏みにじることにならないか冷や冷やしながら見た(実際、ロケ地である清水市の商店街からは、不良が集まるようになり、シリーズ後半のロケは断られたらしい)。


 何せ凶悪な戸塚水産との抗争ゆえ、喧嘩も死と隣り合わせ。刃物、鉄パイプなどの凶器の使用は当たり前。オイラ井筒和幸の問題作「ヒーローショー」を見た後だったので、際限のない無自覚な暴力の再生産を無邪気に肯定をできるはずもなく、見ながらあまりいい気分はしなかった。


 ところが、ラスト、戸塚水産高のトップとのタイマンでは、それまでの凶器の応酬はどこへやら、何とバックドロップで片がつく! 「勝った〜」と何度も歓喜の叫びをあげるトオルやヒロシを見ながら、ああ、これはプロレスだったのだ! と最後の最後で気がついた。思えば新日本プロレス木村健吾兄さんが特別出演していたところで気がつけばよかったのだ。今でこそプロレスの神通力は薄れたが、1980年代と言えば、プロレス的格闘が「強さ」の代名詞だった時代。そう考えると、トオルやヒロシ、キョーコの制服の形をはじめ、いたるところに時代が刻印されている。