池井戸潤「オレたちバブル入行組」文春文庫 と テレビドラマ「半沢直樹」


オレたち花のバブル組 (文春文庫)

オレたち花のバブル組 (文春文庫)


 (ネタバレあります)
 原作読了。「オレたちバブル入行組」が、ドラマの第1話〜第5話の原作になっているのに対し、続編の「オレたち花のバブル組」は、第6話〜第10話の「東京本店編」に対応している。ドラマは、ほぼ原作に沿っているが、一部デティールが異なる。一例をあげると、悪辣な伊勢島ホテルの羽根専務は、原作では男性だが、テレビドラマでは女性という設定で、倍賞美津子が演じた。


 また、テレビドラマのラストは、功あったはずの半沢直樹が、頭取から出向を命じられるというサプライズな終わり方だったが、原作では、「苦りきった顔をした」人事部長から、異動を内示されて終わる。行内融和のため、やりすぎた半沢に対する行内の批判をかわすための処置、と、人事部長は言う。ドラマと比べると、ほろ苦い終わり方であり、オイラは原作の方が自然だと思う。


 また、ドラマの最終回、香川照之扮する大和田常務の悪が露見し土下座するが、普通に考えれば土下座しなくてもかまわない場面であり、むしろ大和田常務は屈辱的な土下座などしたくないと思うのだ。原作では土下座などしない。土下座そのものに無理があるのだが、香川照之堺雅人大芝居で、無理な展開を強引に乗り切ろうとするドラマのアクロバティックさは、それはそれでエキサイティングだ。


 タイトルにもあるように、原作は、バブル以降の経済状況に翻弄されてきた行員たちの世代論でもある。多くの都市銀行が経験した、銀行の合併による人間関係や行内事情が細かく描かれていたり、すでに出向を命じられている者や、出世コースに乗っている者、正義をなそうと試みる者など、描き分けが多岐にわたり、奥行きがあり、スケールが大きい。テレビドラマを観た見ないにかかわらず、読みごたえのある作品だと思う。


関連エントリ 

池井戸潤「オレたちバブル入行組」文春文庫 と テレビドラマ「半沢直樹
http://d.hatena.ne.jp/furuta01/20130928/1380409622



香川照之堺雅人大芝居。うーん、思わず笑ってしまう。