「カーネーション」と「今和次郎」展、「おじさん図鑑」


カーネーション 完全版 DVD-BOX3<完>【DVD】

カーネーション 完全版 DVD-BOX3<完>【DVD】



 NHKの朝ドラ「カーネーション」(終了済み)に魅了されている。
 DVDでの鑑賞は、現在6週目。ちょうど昭和8年、主人公の糸子が19歳で、洋裁の仕事をはじめる時期。
 続けて見ると、伏線がうまく張られているのがよくわかり、密度が濃く評判どおり面白い。時間と手間をかけて作られているのが感じられる。
 6月9日のエントリーに引き続き、区切りのいいときに、また「カーネーション」の感想を書いてみたい。


 国立民族学博物館で6月19日まで開催している特別展「今和次郎採集講義─考現学の今」には、朝ドラ「カーネーション」の中で小原糸子(尾野真千子)が作った衣装3点が展示されている。



 第5週「私を見て」で糸子が売りこんだ「心斎橋百貨店の制服」、第6週「乙女の真心」で、糸子が初めて注文をうけた若い芸者駒子(宮嶋麻衣)のために作った「駒子のワンピース」、同じく第6週「乙女の真心」で、ダンスホールの踊り子サエ(黒谷友香)に作った 「サエのイブニングドレス」。
 展示を見たときには「カーネーション」のことを意識していなかったので、これらの展示はほとんど記憶にないのだが、DVDを見たあとだと、せっかくの展示なのにちゃんと見ればよかったと後悔しきりである。


 なぜ「今和次郎展」に「カーネーション」の衣装が飾られたのだろうか。今和次郎は、当時の銀座の人々がどんな服装をしているのか、精密に記録し分類した。彼の提唱した「考現学」の調査である。彼の「東京銀座街風俗記録統計図索引」などには、大正末の銀座の人々の服装が、微に入り細に入り精緻に描かれている。その今和次郎の生きた時代の風俗を理解するための展示として、日本の洋装導入の先駆者だった田中千代のコレクションとともに展示されたのである。


 「今和次郎展」を観た後、ふと思い出した本があって、本棚から取り出して再読してみた。なかむらるみ「おじさん図鑑」である。巷に生息する「おじさん」の姿をスケッチし、分類し、コメントしたもの。本書のおじさんのイラストには、「おじさん」のとてもいい渋味が詰まっている。


 今和次郎的視点で見ると、「おじさん図鑑」は、まさに考現学だよなあ、としみじみ思う。本書で紹介されているおじさんの中に、通りすがりのおじさんに交じって、泉麻人が入っていた。本書の作者の「なかむらるみ」という人は、「WEB平凡」の泉麻人の「東京のふつうの喫茶店」にイラストを書いていて、泉麻人と深いつながりがあるようで、そのコンテクストに影響を受けていることは明らかである。そういえば泉麻人も「考現学」を意識した仕事を実はたくさんしているのだった。


おじさん図鑑

おじさん図鑑