みんぱく映画会「記録映画 昭和の家事」



 久しぶりの関西。東京在住のBOSE氏と、大阪は吹田市大阪万博記念公園内の国立民族学博物館でおちあい、特別展「今和次郎採集講義・・・・考現学の今」、そして関連する記録映画「昭和の家事」を見る。


 記録映画「昭和の家事」は、昭和の高度経済成長以前までは、どこの家でも普通に行われていた家事の様子を記録したもの。製作者の小泉和子さんは、家具史・生活史の研究者として有名な方で、昭和26年に建てられた実家を「昭和のくらし博物館」として丸ごと公開していることでも知られている。「昭和の家事」はDVD4巻にまとめられ、希望すれば買うこともできる。今回は4巻の中から「着物を解く」「洗濯をする」「おはぎを作る」「夏掛け布団を作る」の4本をピックアップ。監督は小泉さんの友人の時枝俊江さん。


 家事の様子を記録しただけの映画なんて退屈だろうと思う人も多いかもしれないが、どうしてどうして、とても引き込まれ興味深く観た。それは、会場となった国立民族学博物館の講堂(450人規模のホール)を8割方埋めた観客のほとんどが、オイラと同じように思ったと思う。出演者は小泉スズさん。撮影当時(1990年〜1992年)80歳〜82歳。なんと製作者のお母様。お母様を撮影対象に選んだのは、1990年当時、すでに昔の家事、とくに縫い物や張り物ができる人をみつけるのが難しくなっていたのである。


 すずさんの技は、まるで職人の技のようだ。洗濯をするにも、水はなるべく無駄にしないよう、手際よく、段取りよく事をこなしていく。洗濯に使うのは、それほど大きくない「たらい」と洗濯板。もちろん洗濯機などは使わない。今の家事と比べると気の遠くなるなるような手間のかかる作業。それを高度なレベルで見事になしとげていくリアルな姿には、ちょっとした感動を呼びさまされる。小泉和子さんもトークでおっしゃっていたが「家事の持つ教育力」を感じた。昔の人は本当に偉大だったと思う。


 大正末から昭和初期の家事は、とくに大変だったらしい。西洋文化が入ってきて、従来の日本式の生活様式に加え、西洋文化生活様式もマスターしなければならなかった。洗濯でいうと、江戸時代までは、踏み洗いで洗剤も使わず、そもそも滅多に洗濯もしなかった。そもそも昔の人は白いものをあまり着なかったという。これが昭和になると、西欧化とともに、白い衣服を着ることが多くなり、頻繁な洗濯やアイロンが必要となり、洗濯は主婦にとっても重労働となったのである。


 こんなレベルの高いことをやっていたのに、その労働はきちんと評価されなかった。女性はこうした家事から解放されたいと願い、電機製品の普及により、それはある程度達成された。しかし、そのために、我々は地に足のついた「生活力」を失ったのだ。現代人がどこかひ弱で、生きるサマが心もとないのは、便利になることで、大切なものを失ってきたからだ。これはもう間違いない。せめて家事をきちんとやろう、オイラは改めてそう思ったのだった。


昭和の家事 (らんぷの本)

昭和の家事 (らんぷの本)