「三年B組金八先生」第二シーズン23話・24話「卒業式前の暴力」その2


3年B組金八先生 第2シリーズ(9) [DVD]

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 「3年B組金八先生」について書くために見たが、実は不覚にも感動してしまった。オイラは知らなかったのだが、「卒業式前の暴力」は、「三年B組金八先生」の中でも屈指の名エピソードとして知られているとのこと。ネットで検索してみると「金八愛」にあふれた人々が、言葉をつくしてその素晴らしさを賛美していて、オイラは気の利いたことを書こうとも、その足元にも及ばないと実感した。おそらくこれは愛情の差だろう。


 オイラはリアルタイムで「3年B組金八先生」を見ることはなかった。なぜかと言うと、放映枠の金曜夜8時は、裏番組に「ワールドプロレスリング」が放送されていたからだ。初期は金曜夜8時に放映されたことから「金八」だったのである。


 このエピソードの中心人物となる加藤(直江喜一)は転校生で元番長。暴力教師に恨みを持つ、かつての友人から卒業式ボイコットの話を聞かされ、ボイコットをやめさせ校長に謝罪させるため、転校前の中学校に殴りこむ。騒然とする学校。暴走族やマスコミや警察まで出動し、大変な騒ぎに。そんな加藤を止めようとして乗り込む金八。その混乱ぶりと加藤の葛藤が、非常に緻密に描かれているのが印象的だった。教師も生徒も、しっかりと気持ちの乗った台詞の応酬を聞かせてくれる。脚本家小山内美江子の名セリフもたくさんあり、作り手がノって作っているのがよくわかる。


 加藤は、校長を放送室に監禁し放送のスイッチを入れ、やり取りを校内の全員に聞こえるようにして、校長と対決し過去の非に対して謝罪を勝ち取る。その直後の場面では、中島みゆきの「世情」をBGMに、スローモーションで警察に取り押さえられ連行される様子を描き、日本ドラマ史上に残る名場面と言われた。BGМを前面に出す演出など、情緒的ではあるが、情緒に流されず、精緻かつ論理的に作られたことが成功の要因だろう。


 ただし、この場面は、映画「いちご白書」(1970)のラスト、機動隊による暴力的な学生排除のシーンを下敷きにしている。また、BGМに流れる中島みゆきの「世情」も、学生運動の時代を共感をこめて歌った歌である。つまり「卒業式前の暴力」は「校内暴力」を「学生運動」の論理に置きかえて成立している作品なのだ。1980年代はじめ頃は、まだ校内暴力を「理由ある反抗」と描くことにリアリティがあったことを、見直しながら、しみじみと感じたのだった。時代は変わった。


「「卒業式前の暴力」その1」はこちら
http://d.hatena.ne.jp/furuta01/20121012/1350174829



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