一日ひとつの格言を選ぶ
オイラの勤務校には、朝のショートホームルームの前に、10分ほどの時間がある。今年度はこの時間に格言の硬筆書写をしている。硬筆書写と侮るなかれ、含蓄のある言葉を書き写すという「身体化」の作業を通して、言葉にこめられた意味の深いところまで高校生に実感してもらおうという試みである。4月8日のエントリでも触れた「つながる言葉で世界を満たそう」という、今年度のオイラの実践の方向に沿う取り組みである。
今年は学年主任を務めているので、毎日オイラが言葉を選び、解説を書き手本を作っている。4月からこちら、選んだ言葉は以下の通り。なお、最初の「為せば成る」は、オイラの勤務校の校是である。
為せば成る
為さねば成らぬ何事も
成らぬは人の為さぬなりけり
上杉鷹山
[解説]
江戸時代後期に、米沢藩主だった上杉鷹山(うえすぎ・ようざん)が、家督を譲るに当り、藩主の心得として伝授した言葉。どんなことでも強い意志を持ってやれば必ず成就するということで、やる気の大切さを説いた言葉。
夢は逃げない。
逃げるのは
いつも自分だ
高橋 歩
[解説]
高橋 歩(たかはし あゆむ 1972〜)「自由人」を自称する日本の実業家、随筆家。 東京都港区生まれ。 出版社のA-Works、飲食業のPLAY EARTH、アイランドプロジェクトの代表取締役代表として活動するかたわらら、講演や執筆活動を行っている。
学べば学ぶほど、
自分が何も知らなかったことに気付く。
気付けば気付くほど、
また学びたくなる。
アルベルト・アインシュタイン
[解説]
アルベルト・アインシュタイン(1879〜1955)。物理学者としてだけでなく哲学者としても類まれな能力を持ち合わせていたという。名言も数多い。
死にたい奴は 死んでいけ。
俺はこれから 朝飯だ。
中原 中也
[解説]
太平洋戦争時、敗戦の野山をさまようなか、戦友が銃弾に倒れた。「俺を捨てて、国へ帰れ。お前だけは、なんとしても国へ帰れ」そう言って戦友はこときれた。呆然(ぼうぜん)と亡骸を見つめ、涙ボロボロ流しながら、最後の握り飯をほおばって、気力を振りしぼりながら、極限の状況で吐いた言葉である。
私はお前の言うことに反対だ。
だが、お前がそれを言う権利を、
私は、命にかけて守る。
ヴォルテール
[解説]
ヴォルテール(1694〜1778)は、フランスの哲学者であり、作家、文学者、歴史家。「言論の自由」に対する理想的な姿勢を示した言葉として有名。
あのね、
立派な人になんかにならなくていいの。
感じのいい人になって下さい。
坂本 金八
[解説]
3年B組金八先生第4シリーズ、最終回「卒業スペシャル」(1996年放送)より。あまり無理しなくていいよ、という意味。
弱い者ほど
相手を許すことができない。
許すということは、
強さの証だ。
ガンジー
[解説]
ガンジー(1869〜1948)「マハトマ・ガンジー」(「マハトマ」は「偉大なる魂」の意)と呼ばれることも。民衆暴動ではなく「非暴力、不服従」によってインドの独立に成功し、この思想は、世界に大きな影響を与えた。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアや、ダライ・ラマ14世などに、その思想は受け継がれている。
人間は、元々そんなに賢くありません。
勉強して修行して、
やっとまともに なるのです。
瀬戸内寂聴
[解説]
瀬戸内寂聴(せとうち・じゃくちょう) 徳島県徳島市に生まれる。東京女子大学在学中に結婚するも夫の教え子と恋に落ち、夫と長女を残して京都で生活。
1956年に処女作『痛い靴』を発表、1963年には不倫の恋愛体験を描いた『夏の終り』で女流文学賞を受賞し、作家としての地位を確立。
1973年に出家。尼僧としての活動も熱心で、週末には青空説法を行なっていた。講演などでは「笑うこと」が大切であると説き、座右の銘は「生きることは愛すること」だという。
[解説]
延暦寺を建立し、天台宗を開いた最澄(767〜822)の言葉。「いちぐうをてらす」と読む。一人の力では世界全体は変えられないが、一人ひとりが、それぞれの持ち場で全力を尽くすことによって、社会全体が明るく照らされていくという考え方。「お金や財宝は国の宝ではなく、家庭や職場など、自分自身が置かれたその場所で、精一杯努力し、明るく光り輝くことのできる人こそ、何物にも代え難い貴い国の宝である」の意味である。
高校時代は代表選考から漏れた。
9000回以上シュートを外し、
300試合に敗れ、
決勝シュートを任されて26回も外した。
人生で何度も何度も失敗してきた。
だから私は成功した。
マイケル・ジョーダン
[解説]
マイケル・ジョーダン(1963〜)アメリカの有名元バスケットボール選手。その実績から「バスケットボールの神様」と評された。左の言葉は、ナイキのCMで紹介されて有名になった。
時間の使い方の 最も下手な者が
まずその短さについて 苦情を言う。
ラ・ブリュイエール
[解説]
ラ・ブリュイエール(1645〜1696)は、フランス17世紀の思想家。現実の人間を洞察し、人間の生き方を探求して、それを格言のような独特の非連続的な文章で綴った・主著に『カラクテール』。
お酒飲むひと 花ならつぼみ
今日も咲け咲け 明日も咲け
都々逸坊扇歌
[解説]
都々逸(どどいつ)は、7775形式の、口語による定型詩。三味線と共に歌われ、寄席や座敷などで演じる出し物である。 江戸末期に初代の都々逸坊扇歌(どどいつぼう・せんか)(1804〜1852)によって大成された
非常識なことをするには
まず常識を知らなきゃいけない。
志村けん
[解説]
志村 けん:1950年生まれ。日本を代表するコメディアンの一人で、ザ・ドリフターズの一員。バカ殿様、変なおじさんなどのキャラクター、大丈夫ダア、アイーン、ダッフンダなどのギャグで知られる。
銭は一銭もいらん。
そのかわり、
会社のえらか衆の、
上から順々に、
水銀母液ば 飲んでもらう。
[解説]
石牟礼道子著 『苦海浄土 わが水俣病』より。認定患者3000名、死者300余人を数えた水俣病。患者の補償金要求に、企業がゼロ回答を示したとき、死に瀕している患者が言った言葉。怨念のこもった言葉が、次のようにつづく。
「上から順々に、42人死んでもらう。
奥さんがたにも飲んでもらう。胎児性の生まれるように。
そのあと順々に69人、水俣病になってもらう。
あと100人ぐらい潜在患者になってもらう。それでよか」
知恵のある奴は 知恵を出そう。
力があるやつは力を出そう。
金のある奴は 金を出そう。
何にも出せない奴は 元気出せよ。
松山 千春
[解説]
松山千春(まつやま・ちはる)1955年生まれのフォークシンガー。「恋」「季節の中で」「長い夜」などヒット曲多数。北海道足寄郡足寄町出身で、北海道を拠点に活躍。コンサート公演回数は2000回以上、動員数は好調で、映画、ラジオ、ドラマ出演、政治活動など、歌手以外の方面へ活動範囲を広げている。
こんなところで遊んでないで、
さっさと帰って
油まみれになって働け!
本田宗一郎
[解説]
本田宗一郎(1906〜1991)自動車メーカーホンダの創業者。技術者畑出身の経営者で、独自の技術へのこだわりでホンダを世界的な企業に育てあげた。従業員からは親しみをこめて「オヤジ」と呼ばれていた。左の言葉は、経営者向け勉強会に講師として呼ばれたときに発した言葉。理論や勉強は大切だが、それ以上に実務の中で培われるものを大切にし、一生懸命汗水たらして自分の事業を行えと戒めた言葉。
「考えるな、 感じるんだ」
ブルース・リー
[解説]
香港の伝説的アクションスターで武道家だったブルース・リー(1940〜1973)が、代表的主演映画「燃えよ!ドラゴン」の冒頭で発した有名なセリフ。武道をはじめ、あらゆることは、理屈だけで物事を考えず、身体を通して、無心になって、見えないものを感じ取ることが必要だと戒めた言葉。
やってみせ、言って聞かせて させてみて、
褒めてやらねば 人は動かじ
山本五十六
[解説]
山本 五十六(やまもと いそろく)(1884〜1943)は、大日本帝国海軍軍人。太平洋戦争初期、連合艦隊司令長官を務め、真珠湾攻撃、ミッドウエー海戦などを指揮した。アメリカ軍に暗号を解読され、南太平洋のブーゲンビル島上空で待ち伏せに遭い、撃墜され戦死した。左の言葉は、望むように人を動かすためには、相手の心を動かす粘り強い努力が必要なことを表した言葉。