ただ水のように


 「舞台の上に立つときに大切なことは何ですか」
 高校生から聞かれると、こう答えるようにしている。


 「考えるな。感じるんだ」


 うまく演じようと思わない。余計なことは考えない。ただ無心になる。目の前で起こることを、初めて起こることのように感じ、反応する、演劇はその連続。


 もちろん「考えるな、感じるんだ」はオイラの言葉ではない。
 そう言ったのは、この人。



 必要なことは、オイラは銀幕から学んだ。



 1973年。この映画を見ずしてアクションは語れない。言わずと知れた、ブルース・リーという不世出のアクション・スターを世界に知らしめた不動の名作。後発のアクション映画はもとより、格闘技そのものにまで多大なる影響を与えた。「スター・ウォーズ」(1977)も露骨にこの映画の影響を受けている。「心の目を開け。フォースを使え」というジェダイの奥義はブルース・リーの教えを連想させるし、デス・スター攻略のクライマックスで主人公が師オビワンの声を聞く場面も、この映画そのもの。


 といっても、「燃えよドラゴン」の「悪の要塞島に乗り込み中国系の義手の首領と戦う」という設定は「007/ドクター・ノオ」(1962)のパクリ。「白猫を抱く場面」があるのも、007のスペクターの首領を露骨に意識しているのは御愛嬌といったところか。ただブルース・リーの身体を刻みつけたという一点において歴史に残る作品なのである。