WILL2011年6月号

    東谷暁「歪んだ「東電叩き」の陥穽」


WiLL (ウィル) 2011年 06月号 [雑誌]

WiLL (ウィル) 2011年 06月号 [雑誌]


 時間がないので、愚にもつかないものにはコメントしたくないのだが、あまりにひどいので書く。WILL2011年6月号、東谷暁「歪んだ「東電叩き」の陥穽」である。
  内容は、ざっと以下の通りだ。


 「福島第一原発の事故を人災だというのは、悪質な難癖である。東京電力は、確率計算が可能な分については、安全性を高める努力を続けてきた。だがM9.0の地震と14メートルの津波など想定できるわけがない。「絶対安全」などありえない。危険とほどほどのところで付き合い続けていくしかないのだ。原発脱却などできるわけがないのだから。東電を解体してしまうと蓄積されていた技術は消滅してしまう…」


 「常軌を逸した東電叩き」という。しかし、オイラには、東谷が、なぜ東電をここまで擁護するのか、わからない。原発は、「想定外」の事態が起こったとき、とりかえしのつかない事態になる。それを分かっているから、電力会社や国は、国民に対して「絶対安全」と言い続けてきたのだろう。「絶対安全」と言わなければ推進されなかったのだ。それを今回は想定外だから「仕方なかった」などと居直ることなど許されるわけがないではないか。こと原発に関する限り「危険とほどほどに付き合う」などということは、できないのである。
 また筆者は原子力安全・保安院の西山英彦審議官が「絶対安全」と言ったのはおかしいと言うが、絶対安全と住民に向かって言い続けてきたのは、当の電力会社なのである。なぜ、東谷は、東京電力にまず抗議しないのか?


東京電力がスポンサーとは


 そこまで書いたとき、山岡俊介のブログに次のような記事を見つけた。「右翼系雑誌『WiLL』の最大スポンサーは東京電力の模様」。これは、ブログ「にゃんこ先生の学習帳」にも詳しい。


 さらに見つけたのは、先日コメントした「本当は怖いだけじゃない 放射線の話」。この書物の著者、大朏博善が編集委員を務めているのがWILL。大朏博善氏は発行元のワック出版の取締役。いやはや、世間は狭いですな。


 また週刊エコノミスト2011年5月24日号には、ジャーナリスト本橋恵一氏の「原発事故の背景を探る「普通の会社になれなかった東電」」には、今回の事故が「人災」である理由が、リアルに書かれている。こうした指摘に東谷はどう答えるだろうか。以下引用。


 東電の原子力部門は、「関東軍」と呼ばれるほどトップのコントロールがきかない聖域化された組織だった。エンジニアでもある彼らは、安全や保安を含めた技術には絶対的な自信を持っていた。だが、榎本副社長を失った原子力部門は、経営陣に対し、自らコスト圧縮を約束する代わりに、自らの聖域を守ることに躍起になっていく。その結果、例えば定期検査の短縮が非合理な形で行われるなど、安全性は二の次になっていく。同じ理由で、耐震工事もおこなわれずにいた。


 中部電力浜岡原発の耐震工事に踏み切った際、勝俣社長は「耐震性がないことを認めているようなものだ」と批判したと言われている。その直後の2007年に起きたのが、新潟県中越沖地震による柏崎・刈羽原発の被災だった。本来なら、これを契機に福島第一、第二原発の耐震工事を積極的に行うべきだった。だが、この事故が経営を圧迫し、コスト削減と利益優先の姿勢が、かえって地震対策を後手に回らせてしまう。


 こうした悪循環が、福島第一原発の震災事故を引き起こし、現場と乖離した経営が事故をいっそう深刻なものにしていったと言えるだろう・・・・・。(40ページ)