高橋雄介「誰でも1km2泳げる! がんばらないクロール」ソフトバンク新書


誰でも1km泳げる! がんばらないクロール (SB新書)

誰でも1km泳げる! がんばらないクロール (SB新書)


 泳法の本はたくさんある。分かりやすくていい入門書なのだろうが、オイラのニーズには合わぬ。以下の文章はこの本のレビュウではない。この本をきちんとレビュウするだけの資格がない。


オイラは海で泳ぐ


 オイラは海でしか泳がない。海で泳ぐ者にとって、大切なのは状況確認。波や潮の具合を確かめたり、位置確認をすることは、意外に多い。水面では、顔を出したまま泳ぐことが多く、クロールはあまり使わない。


 多くの泳法の本は、プールで泳ぐことが前提。泳法についての技能書は、四泳法ばかりに言及する。四泳法とは、クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ。これらの泳法は競技としても定着している。決められたレーンを前へ前へと進むのが目的の泳法である。


 これに対し、海は自由である。レーンもない。タイムを気にすることもない。塩水は浮力を増すので、泳ぎやすい。反対に、マイナス面は、波が強ければ泳ぎにくい点だ。また潮流の急激な変化は危険を伴う。天候や水温にも左右される。またクラゲの刺胞毒などの被害にも出くわす。


 海には他者との対話がある。波や潮、自然との対話。シュノーケルとゴーグルをつけて潜れば、海の生物たちとの対話。少年の冒険の延長線上にある感じ。プールとは文化が違う。


 オイラはシュノーケリングをするときと、単に泳ぎに行くときがある。夏の終わりになると、黒潮に乗ってやってくる死滅回遊魚が増えるので、シュノーケリングも楽しい。でも単にリラックスして泳いでいるだけでも、それは至福の瞬間。横泳ぎ愛好者のHPとか、どなたか作りませんか?


 かっこいいクロールには憧れがある


 でも、そんなことを言いながら、オイラがこの手の泳法の本をときどき買ってしまうのは、きれいなクロールには憧れがあるからだ。


 本書「がんばらないクロール」では、新たな知識を知ることができた。
 水泳は体にいい。水の中に入ると、体表面積1平方mあたり約1tの圧力が加わる。水圧によるマッサージと足の筋肉のポンプ作用によって、体にたまっている体液や不要物を心臓へ送り返しやすくなる。一回当たりの拍動(一回拍出量)で全身へ送り出せる血液の量も増える。心拍数も、水深1m程度のプールであれば、1分当たり約10拍減る。


 水は空気と比べて約800倍、粘り気は約50倍。抵抗が高いので運動量も大きい。体重60kgの男性の場合、100kcal消費するためには、ゆっくり歩行だと約40分、ジョギングだと15分かかるのに対し、クロールだと5分、平泳ぎでも8分程度ですむ。腹囲を1cm減らすためには、約7000kcalの消費が必要。ゆっくり歩行だと48時間、ジョギングだと18時間かかるのに対し、クロールだと6時間で達成できる。エネルギー消費効率がとてもいい。
 オイラも痩せるといいな。


 海で泳ぐことが難しくなった


 オイラは夏になると、当たり前のように海で泳いでいるが、多くの人にとっては、海で泳ぐのは難しいのかも知れない。まず近くに海がない。あっても泳げない。汚れている。都会の人はとくにきびしい。
 だが、一昔前は、日本のどこにでも、きれいな海があって、気候的条件を別にすれば、どこでも泳げたのである。文明と引き換えに、我々は大切なものを失ってしまったのかも知れぬ。